成約率9割のロー・プレッシャー営業

2007.09.13

営業・マーケティング

成約率9割のロー・プレッシャー営業

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

約1900人の顧客を抱える、 ソニー生命保険のファイナンシャルプランナー、松岡博巳氏。 「顧客に信頼される営業マン」、 「愛され続けるサービス」をモットーにする松岡さんは、 多くの場合、「紹介」を通じて新規見込客に会います。


その成約率はなんと9割!

しかし、この驚異的な成果は、私たちが思わずイメージする、

「能弁で押しの強い営業スタイル」

がもたらしたものではありません。

紹介を受けると松岡さんは事前に、

「○○様から紹介で、
 保険の相談や心配事をお聞きできればと思います」

といった内容のハガキを送ります。

次いで、顔写真と簡単な自己紹介文を封書で送っておく。

こうして、事前に松岡さんの情報を見込客に渡しておくことで、
初めて会った時に、すぐに打ち解けて話ができるのです。

もちろん、会った後の紹介者へのお礼も怠りません。

そして、見込客との会話の中では、なによりも、

「お客様の喜怒哀楽」

を感じ取ることを重視。

その感性を磨くために、松岡さんは、
年50回のセミナー参加や読書を行っているそうです。
また、人間関係を良くする

「選択理論心理学」

の勉強会の幹事をしています。

松岡氏は、自分の営業方法について次のように述べています。

“気持ちの理解・共感があって初めて、お客様とのあいだに
 信頼関係が芽生え始めるんです。十分な時間を必要としますが、
 私が保険の提案に入るのはその段階を経てから。最初は、
 イエス・ノーの簡単な質問をし、信頼の度合いが上がってきてから
 難しい質問に切り替えていきます。”

あくまで顧客主導で話を進め、
決して加入を強要しないのが松岡さんなのです。

松岡さんのこの営業スタイルは、

「ロー・プレッシャー営業」

と呼ぶことができます。

「ロー・プレッシャー営業」とは、端的に説明すれば、

顧客ににじり寄り、購入に追い込むのではなく、
顧客自身に自由に買うか買わないかを自由に判断させること

です。

ちなみに、この対極にある営業スタイルは、

「ハイ・プレッシャー営業」

これは文字通り、あの手この手を弄して
見込客を「買う」という意思決定に追い込みます。

日本語では、

「押し売り」

と言えば理解が早いでしょうね。

さて、商品の選択肢が豊富にあり、
情報収集能力が高い現代の「賢い顧客」に対しては、
もはや、「ハイ・プレッシャー営業」は効果が薄く、
むしろ、一見弱腰に思える

「ロー・プレッシャー営業」

の方が効果が高いケースが多いと思われます。

「ロー・プレッシャー営業」においては、
2つの原則があります。

ひとつは「誠実でなければならない」こと。

購入を強要しないのは、
あくまで見せかけの誠実さや親切さであって、
結局のところ、「なんとかして買わせたい」
というセールスパーソンの

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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