百貨店ITリニューアルの勧め

2007.09.04

営業・マーケティング

百貨店ITリニューアルの勧め

坂口 昌章

東京、大阪を中心に、百貨店の大型リニューアル投資が計画されている。しかし、一般的なリニューアル効果は、半年程度しか持続しない。 むしろ、「検索できる百貨店」を実現するためのITリニューアルが必要ではないか。

1.百貨店のリニューアル投資の活発化
 各百貨店は東京大阪の都心において、久々に積極的なリニューアル投資を行っている。日本経済新聞(2007年3月3日付)によると、西武百貨店渋谷店は80億円かけてこの3月に、高島屋新宿店は130億円かけて4月にリニューアルオープンする。京王百貨店も時期は未定だが80億円かけてリニューアルを計画。西武百貨店池袋店も08年から全面改装の予定。東武百貨店池袋店は11年までに90億円で全面リニューアルを行う。伊勢丹新宿本店も150億円かけて08年秋に全面リニューアルオープンの予定だ。
 大阪では、三越が400億円かけて大阪再進出を果たす11年に向けて、大型投資が進む。11年には、阪急百貨店梅田本店は総額600億円を投じる建て替えが終了。同11年の大丸梅田店も増床リニューアルに200~250億円を投じる。近鉄百貨店阿倍野本店も新館建設や本館改装で09年春までに総額150億円の投資を予定。高島屋大阪店も09年秋を目指して新館建設と改装に340億円を投資する。
 消費不況も底を打ち、デフレも回復の兆しを見せている。不動産価格も上昇に転じるなど、ようやく消費不況の長いトンネルを抜け出ようとしている。遊休資産の売却やリストラを続けながら、じっと我慢していた百貨店各社だが、ようやく改装の資金手当てが可能になったのである。
 ここ10年ほど、百貨店のリニューアルと言えば、外資ブランドショップの導入に限定されていた。外資ブランドショップは、百貨店出店以外にも次々と都心の一等立地に路面店をオープンしている。郊外立地には次々と大型ショッピングセンターがオープンし、新しい専門店集積が出現している。顧客の流れは明らかに変わっており、このまま何もしなければ百貨店は確実に地盤沈下していくだろう。
 百貨店のリニューアルは競合店対策という意味で連鎖的に起きる。ここ数年間は百貨店のリニューアルが次々と続き、久しぶりに百貨店が注目を集めることになるだろう。
 問題はリニューアルの目玉である。80年代の百貨店リニューアルはDCブランドの導入だった。90年代はインポートブランド。環境整備だけでなぐ新しい商品MDを導入することで売上アップを図ってきたのである。しかし、2000年の百貨店リニューアルの目玉は簡単には見つからない。

2.持続しないリニューアル効果
 昨年、私は某百貨店からリニューアルの相談を受けた。久しぶりに都心の百貨店をじっくり観た感想は「全てそこそこ」というものだった。商品の品質やレベルは低くない。よく見れば、良い商品、欲しい商品も見つかる。VMDもマニュアル通りにきれいに出来ている。販売員の接客もマニュアル通り。ケチをつけるところはないが、感動することもない。徹底した競合他店と差別化も見られない。
 多くの百貨店が同質化しているのは、その取引システムによる。セレクトショップのように、世界から新鮮な商品を仕入れ、自社の販売員で販売すれば差別化は可能だ。しかし、委託仕入(百貨店用語では普通買取)で派遣販売員をつけてくれる仕入れ先に限定している限りは、同質化は避けられない。
 また、日本の百貨店は店舗数が少なく、PB(プライベート・ブランド)を展開することも困難である。過去の自主MDやPBの失敗に懲りている多くの百貨店は、今回のリニューアルでも大手アパレルとの太いパイプに依存しようとするだろう。
 私に声をかけた百貨店も「自主MDやPBは考えていない。取引先との関係を密にしながら、何とか編集によって新しいMDを展開したい」という矛盾に満ちた条件を提示してきた。私は「それならば、現状のままの商品MDで集客を上げる方策を考える方が良いのではないか」と提案したが、「やはりリニューアルは商品を変えないと」と言う。「それならば、完全買取かPB開発をするのか」と言うと、「それはできない」と答える。こんな中身のない議論を続けながら、何十億、何百億もの投資をするのかと思うと背筋が寒くなったが、おそらく多くのリニューアルの現場では同様の堂々巡りを続けているに違いない。
 日本の顧客は新しモノ好きだ。ファッション雑誌も新しいブランドを追いかけているし、バイヤーも新しいモノには敏感だ。しかし、最早、新しいモノはほとんど日本に導入されている。それでも百貨店はリニューアルの目玉として、日本初上陸のブランドを揃えようとする。運が良ければ、掘り出し物のブランドが見つかるかもしれない。しかし、その効果はどれほど持続するのだろうか。
 私は長くても半年と見ている。新丸ビル、六本木ヒルズなど、新しい商業施設がオープンすると見物客は集まる。しかし、物販は売れない。押し寄せるのは観光客であり、飲食店と単価の低い雑貨が動く程度だ。そして、半年過ぎると、観光客はバッタリ来なくなる。
 百貨店も同様だ。リニューアルオープン時には客が集まる。しかし、殺到するのはリニューアル記念セール、記念イベントに過ぎない。単価の高い商品を販売するには、客数が多すぎるのもマイナスだ。売上だけを考えるのならば、セールやイベントなどを行わずに、静かにオープンすることも考えなければならない。たとえば、一週間は招待客とプレスのみ入場できるようにして、じっくりと買物をしてもらう。広い売場を利用してフロアショー等を開催するのも良い。
 いずれにせよ、リニューアル効果は半年も持てばい良い方だろう。売場の鮮度を保つためにも定期的なリニューアルは必要だが、大型リニューアル投資が利益に見合うかは疑問である。
 私は、百貨店不振の原因は、環境や商品によるものではないと考えている。確かに天井が低く、重苦しい環境では高級感を演出しにくい。しかし、天井高などの構造的な部分はリニューアルでも改善できない。床材を張り替え、天井と照明を改装し、什器を新しくすれば、顧客は魅力的と感じるのだろうか。環境を新しくすれば顧客が喜ぶと考えているとしたら、何とも顧客を馬鹿にした話である。

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