M&A取引の一番最初の段階で、買収が検討する「ノンネームシート」呼ばれる、M&Aにはかかせない企業概要書について説明します。
この案件を見ると、オーナーの年間給与である役員報酬を840万控除してあるとありますので、全ての経費を支払い、オーナーもしっかりと役員報酬を得た後で、年間で900万円の実質営業利益を上げていますので優良案件です。
「④何のスキームで」については、案件概要の売却スキームを参考にします。こちらの案件は「事業譲渡」とありますので、会社ごと買収ではなく、「一事業として」つまりこの案件でいいますと、この飲食店1店舗だけの売買になります。また会社ごとの買収ではないので、ノンネームシートにある純資産や負債額は参考程度に確認するだけで大丈夫です。逆に株式譲渡の場合は、この純資産や負債額という数字をしっかりと見なければいけません。
M&Aには大きく分けて二つの手法があります。株式譲渡の場合には、会社ごと買収しますので会社にある負債、つまり借金も買い手で引き継ぐこととなります。よって、簿外債務などを引き継ぐというリスクもあります。一方、事業譲渡とは、会社は買収せずに、つまり買いたい部分だけ選んで買うことができます。また株式譲渡とは異なり、負債の引き継ぎも原則ありません。株式譲渡と事業譲渡ではそれぞれ、メリット・デメリットがありますが、一般的に小規模のM&Aには事業譲渡には向いているスキームと言われています。よって、この案件では、負債の継承もなく、法人ごと買収する必要もないなど、小規模M&Aに向いているスキームです。
「⑤いくらで売却されているのか」については、案件概要の希望価格を確認します。いくらで売るのが適正なのかということですが、M&Aで用いる評価方法にはいくつかの手法があります。中小企業同士のM&Aや、小規模事業のM&Aや、店舗事業のM&Aでは
<株式譲渡の場合>
・企業価値=純資産+(営業利益x3ヶ年)
<事業譲渡の場合>
・事業価値=有形固定資産+(営業利益x3ヶ年)
が目安とするのが良いと思います。買い手からすると3年で投資の回収ができるという視点で計算します。
この様にしてノンネームシートを見て、興味を持った場合には、次のステップとして、M&A仲介会社に企業名の公開や、詳細な財務資料の公開をお願いします。そこで更に興味があれば、トップとの面談を申込み、交渉、契約へと入っていきます。
私のブログでも、メルマガ配信と同時に簡易版のノンネーム概要を掲載していますが、ご興味のある方は、そういった機会にもご参考にしてもらえると幸いです。
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