社内コーチングにおける「3つのハードル」

2009.06.30

組織・人材

社内コーチングにおける「3つのハードル」

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

社内コーチの育成。これを機能させるポイントは何か。

社員の中からコーチを育成する、上司にコーチングを勉強させてコーチ役を任ずるといった形で、コーチングの技術を取り入れようとする会社が増えています。個別にコーチを雇うとなると高額になるから出来るなら社内で育て、面談や業務上のコミュニケーションにおいてコーチング(的会話)が出来るようになれば・・・という発想は当然と言えますが、その実現にはクリアしなければならない3つのポイントがあります。

一つには、仮にコーチングが成立し、良い目標と目標達成に向かう自発的なやる気が醸成され、計画や手法が明確になったとしても、会社の処遇システムとしてこれを承認し、評価できるようになっているかどうか。上司が良いコーチとなったとしても、その導きとの一貫性があって後押しするような評価の仕組みがなければ、コーチとしての存在意義は低下していきます。つまり人事制度がコーチ自身とその面談の中身を認めないなら、上司のコミュニケーション技術だけ磨いても効果は限定的です。

二つ目は、コーチたる上司は、クライアントたる部下が自ら到達すべき地点やプロセスに気づくまで待つ為に、とても多くの時間を要するということです。答えは相手の中にある。それに気づかせることが大切で、一方的に与えることはしないのがコーチングの基本的スタンスです。忙しい、時間がないが口癖のようになっている組織を頻繁に目にしますが、果たしてこういう組織がコーチングなどという手間ひまと忍耐を要することをできるか、という問題です。

三つ目は、コーチングの実施に当たっては、上司が部下の能力や意欲を信頼していることと、部下がコーチたる上司に対して思うことを気兼ねなく話せるような関係が必要になるわけですが、これは普段の上下関係を全く抜きにしないと難しいということ。部下が評価者であり権限を持つ上司に対して忌憚なく話せるのか、日常の物足りなさを全く排除して上司が部下と向き合えるか。日常的な感覚を見事に切り替えてコーチングをすることが本当にできるのか、という問題です。

コーチングという技術、考え方を社内に導入・浸透させていくことは良いと思いますが、これらをクリアしないと意味がなかった、ということになりかねません。

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「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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