あなたは”思考のアウトソーシング”の罠にはまっていませんか?

2009.06.12

仕事術

あなたは”思考のアウトソーシング”の罠にはまっていませんか?

井上 卓哉

人は意識的か無意識的かは別として、ある一部の事柄については自ら考えることを放棄し、他者の思考に依存している。この現象を以下では“思考のアウトソーシング”と呼ぶ。思考のアウトソーシングは決して珍しいことではなく、人々が日常的に行っていることだが、いくつかの事例を通じて、そこに内在する問題と留意すべき点について考えてみたい。

を4名の弁護士が判定するというものだが、4名の弁護士が全員一致で見解が揃

うことは滅多にない。しかし、我々は1人の弁護士に相談して得た意見を正しい

ものとして鵜呑みにしがちである。

医者についても同様のことがいえる。私の祖父はひどい肩こりや手足のしびれを

感じて病院を訪れたが、ただの過労・精神的なものとして診断された。その1年

後、彼は突然歩けなくなった。脳外科・整形外科などを数件訪問したところ、首

の骨が曲がって首の神経が圧迫されていることが原因ということだった。彼は医

者の診断を鵜呑みにし、自身の感じる違和感を放置してしまった結果、手術後も

後遺症が残り日常生活に不自由することとなった。

 このように国家資格で専門性を保証された専門家の意見ですら必ず正しいとい

うことはあり得ない。まして、コンサルタントや社内の専門スタッフ(経理担当

や人事担当)などの意見は尚更である。このような人の大半は、一部の経験や他

者から伝え聞いたこと、書籍で学習した知識や考え方をもとに自身の見解を述べ

ているに過ぎない。しかし我々はわからない・不慣れな分野においてしばしば自

身の思考を放棄し、このような人たちの意見を鵜呑みにする。 

 このように考えると、“思考のアウトソーシング”を無意識に行ってしまって

いることも多いのではないだろうか。ただし、思考のアウトソーシングそのもの

を否定するものではないし、全てを疑って全てを自分で考えるべきだと主張して

いるのでもない。まず思考のアウトソーシングを行っている事実を認識すべきで

あり、そのうえでどのようにアウトソーシングすべきかを模索することが大切

だ。思考のアウトソーシングを行う際に留意すべき点は2つある。

 1つ目の留意すべき点はアウトソーシング先についてであり、アウトソーシン

グすべき相手かどうかを見極めることが必要である。この場合、アウトソーシン

グすべき人を見極めるだけでなく、彼の情報ソースを把握することが求められ

る。どれだけ思考力のある人でも情報ソースを間違うと正しい結論を導くことが

できないためだ。

 もう1つの留意すべき点は、アウトソーシングすべきでない思考を見極めるこ

とだ。先程の例を取れば、管理職クラスが、自社がどのような現状にあり今後ど

うなるかについて、自分で考えることなく経営者の思考に依存してはならないと

考える。あなたにとって、アウトソーシングしてはならない思考とは何だろう

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