F1から撤退したホンダが得たものと失ったもの

2009.06.09

経営・マネジメント

F1から撤退したホンダが得たものと失ったもの

ITmedia ビジネスオンライン
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2008年12月にF1からの撤退を決めたホンダ。そのホンダの後継チーム、ブラウンGPが破竹の快進撃を続けている。撤退するために、わずか1ポンドという価格でチームを売却したホンダは、何を得て何を失ったのだろうか? 撤退後の半年を振り返ってみた。[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 もう1つのミスは、チームだけでなくF1における人脈も絶ってしまったことだ。ホンダやトヨタは、若手ドライバーを育成する手厚いプログラムを持っており、現在F1を始め世界で活躍する日本人ドライバーはほとんどがホンダかトヨタの支援を受けて育ってきた人たちだ。

 ホンダ育ちの日本人F1ドライバーとしては、2008年にスーパーアグリチームで走っていた佐藤琢磨選手がいる。彼は2008年にスーパーアグリチームが解散したあと、自分を走らせてくれるチームを探し続けていた。今シーズン、トロ・ロッソチームのテストを受けるところまで行ったが、トロ・ロッソは彼と契約しなかった。彼に代わってシートを獲得したセバスチャン・ブエミ選手は、5月末現在20人中14位。苦戦する彼を見るたびに、「これが佐藤琢磨だったら……」と悔しい思いをしているのは筆者だけではないはずだ。たとえ日本チームでも、佐藤選手を始め、ホンダ系のドライバーがトヨタチームで走ることは、まずない。ホンダがF1を去る代わりに、佐藤選手がどこかのチームに在籍できるように手を打っていたなら、“チームは撤退しても、ホンダはF1に残っている”とファンは感じたのではないだろうか。

 2008年、低迷するホンダチームがシーズンを捨てて、すでに2009年用のクルマの開発に賭けていたことは広く知られている。ホンダがF1を撤退すると決めたとき、関係者は「来年は今年より、いい成績を出せるから待ってくれ」とおそらく懇願したはずだ。

ホンダが得たもの、失ったもの

 今年、日本のF1放送は、トヨタチームと中嶋一貴(ウイリアムズ所属)選手が話題の中心となっている。今季のトヨタは確かに速いが、ブラウンGPには及ばない。また中嶋選手はチームメイトに差を付けられて苦戦中だ。番組で取り上げるときも、どうしても歯切れが悪くなる。

 基本的にヨーロッパのスポーツであるF1において、日本メーカーや日本人選手が活躍すれば日本のメディアは当然盛り上がる(大リーグで日本人選手ばかりを応援するのと同じ図式だ)。“ブラウンGP VS. トヨタ”がもし“ホンダ VS. トヨタ”だったとしたら、今季のF1グランプリはそれはそれは盛り上がっていたことだろう。

 日本人が思うよりも、ヨーロッパにおけるF1人気は高い。勝ち続けるブラウンGPは、中継でも常に長い時間映っている。テレビ中継やスポーツニュースで「ブラウンGP」と呼ばれる回数と同じだけ、もし「ホンダ」と呼ばれていたら……その広告効果、経済効果は計り知れない。余談だがバトン選手の現在のガールフレンドは、モデルやタレントとして活躍している道端ジェシカさんだ。GPが開催されるたびに、彼女の姿もまた、世界中へテレビ放映されている。もし彼女が今年、海外(とくにヨーロッパ)進出するとしたら、知名度という点ではかなりのアドバンテージがあるはずだ。

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