『暴走する資本主義』〈続〉:パンとサーカスとサイコロと

2009.06.05

組織・人材

『暴走する資本主義』〈続〉:パンとサーカスとサイコロと

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

資本主義自体は善でも悪でもない。一人一人が持つ「働くことの思想」によって、この経済システムは方舟にもなれば、泥船にもなる。

そもそもケインズも、
私は資本主義より優れた経済システムを知らない。
しかし、人びとの中に生まれる「貨幣愛」こそが問題である、と吐露しています。

資本主義が回り始めてこのかた、
人びとの欲望がそのシステムの箍(たが)をはずし、
いくつもの「●●恐慌」やら「●●ショック」を引き起こしてきました。
しかし問題は、暴走→暴落→規制→新たな暴走の規模が肥大化していることです。

* * * * *

私たちの考え方と行動いかんによって、資本主義が泥船化するかもしれないという大事な分岐点にあって、
私たちは相変わらず、目先の知識やスキル習得ばかりに目がいき、
組織から振られた短期業務目標の達成に忙しい。

肉体労働、知識労働の別にかかわらず、
組織の歯車となって一人一人の労働者が働かされる構図は
チャップリンが映画『モダンタイムズ』で描いたころとさして変わってはいない。

スーパーで1円を節約する主婦が、
あるいは昼食で100円200円を浮かせたサラリーマンが、
FX取引で「きょう1日で5万円の儲けが出た」とか「レバレッジで2000万円の損失が出た」と口にする風景は、
どうも何かを見失っているように思える。

「生活防衛のための投資の何が悪い!」という気持ちもわかりますが、
それは前記事で触れた明石の花火大会歩道橋事故で言えば、
肘を立てて我さきに強引に逃げようとしている姿にも映る。
橋全体が崩れるかもしれないという状況にもかかわらず・・・。
(そういうことに気づいたので、私個人はマネー投資をいっさいやっていません)
(もちろん投資マネーはある部分、企業・産業を興すために必要なことも理解しています)

「パンとサーカス」は、詩人ユヴェナリスが用いた風刺句です。
西洋ではよく知られた比喩ですが、要は、
民衆はパン(=食糧)とサーカス(=適当な娯楽)さえ与えられていれば
為政者に文句を言わず、日々適当に暮らしていくということです。

今の日本を見ると、問題山積ではあるものの、
パンはそこそこ手に入るし、
ストレス発散や憂さ晴らしをするサーカスもさまざまある。
加えて、パソコンや携帯から手軽な操作で、マネーを増やす投資(投機)手段もいろいろ出てきた。
「給料が増えないんなら、カネにカネを生んでもらおう」と
投資商品を買い、日々の相場数値に一喜一憂する。

意地の悪い風刺画家であれば、こうした状況を
パンとサーカスに満足し、サイコロに夢中になっている人びとを描くのではないでしょうか。
もちろん人びとが乗っているのは、泥船です。

次のページそのために「働くことの思想」を一人一人の人間の中に涵養...

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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