B to Bのマーケティングは何が難しいのか?

2009.03.23

営業・マーケティング

B to Bのマーケティングは何が難しいのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

超・基本ではあるけれど、その業界にいないとなかなか解らないのがB to B(Business to Business=企業間取引)の世界。コンシューマー相手のビジネス(B to C=Business to consumer)の世界にいる人にはなかなか未知の世界である。解っている人には「何を今さら」ではあろうが、様々な人から繰り返し質問されることなので、この際、整理してみようと思う。

■「リファレンスユーザー」「ティーチャーカスタマー」を捕まえろ!

ここまでの整理だと、B to Bは何やらとても大変でオイシクナイ仕事のように思えるかもしれない。しかし、消費者向けのB to Cと比べ、一般に1回の取引量が大きく、うまくすれば継続的な取引が見込めてオイシイ部分も多々ある。さらに、一つの代表的なクライアントを獲得し、そこで成功すれば、その業界に水平展開して次々とクライアントを獲得することも夢ではないのだ。そこで重要な意味を持つのが「リファレンスユーザー」「ティーチャーカスタマー」と呼ばれる存在だ。
「リファレンスユーザー」とは、代表事例となるようなクライアントのこと。例えば、某金融業界では、リーダー企業が導入すれば、右へ倣えでシステムが導入されていくという伝説がまことしやかに語られていた。医療業界もそのよう傾向が強い。先進的な開業医の事例は多くの開業医が参考にする。業界を超えても、どのような課題に対して、どんなソリューションがうまく機能して成功したという話は参考にされる。実際には、「成功事例を真似しても、必ずそれが再現される保証はない」という持論を筆者は持っているのだが、ビジネスパーソンはとかく事例好きである。なぜなら、成功事例があれば、自身のDMUである上司を説得しやすく、失敗した時にも言い訳がしやすいからだ。
「ティーチャーカスタマー」という存在はさらに重要だ。ある業界向けのソリューションを開発したとする。しかし、その業界のことを1から10まで熟知するのは難しい。当然、モレ抜けや使えない部分がぼろぼろ出てくる。そうした問題点を承知で導入してくれて、問題点を解消し、ソリューションを磨いてくれるユーザーを「ティーチャーカスタマー」という。
もちろん、ユーザーから得られる利益は極めて少なくいのが通常で、採算度外視がほとんど。しかし、そこで得られたノウハウで水平展開ができれば大きな利益が得られる。
では「ティーチャーカスタマー」はなぜ、協力してくれるのか。それは、いち早くそのソリューションを手に入れ、運用ノウハウまで獲得できればFMA(Fast Mover's Advantage=先行優位)が獲得できるからだ。他社が完成されたソリューションを導入し、運用ノウハウを獲得するまでに先行逃げ切りで地位を築こうという目論見だ。その意味からすると、ソリューションの提供者による水平展開とは若干、利害が対立する部分もある。
費用を抑えてFMAを取りたいユーザーと、水平展開したい提供者。まさに、腹の探り合うである。そうした部分もB to Bの特徴である。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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