偶発を必然化する力~秋のキャリア思索4冊

2008.11.03

組織・人材

偶発を必然化する力~秋のキャリア思索4冊

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

「人生もキャリアも、ある意味“行き当たりばったり”でいいじゃないか」・・・私はキャリア研修でそう言い放っています。ただ、偶発を必然化する意識をもってのことですが。

そのために、各人は好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心を持ち、
失敗を許容するおおらかさを持つことが重要だといいます。
これらを教授は「ハプンスタンス・アプローチ」
と名づけていますが、
変化の激しい時代を生きる上で、この心の持ち様はとても有効だと思います。


ジェラート・パートナーズのH.B. Gelatt博士は、同じような観点から
意思決定の方法論として
「Positive Uncertainty」(不確実性を肯定的に受け入れる)
という概念を提唱しています。

◆「セレンディピティ」~迎えに行く偶然
科学の世界では、偉大な発見が偶然の失敗や何気ない所作から生まれることが多い。
しかし、果たしてそれは、
偶然だったのか、それとも必然だったのか・・・?

「チャンスはその心構えをした者に訪れる」。
Chance favors the prepared mind.

これは、フランスの細菌学者ルイ・パスツールの言葉。
ノーベル賞を受賞する科学者たちが頻繁に引用することでもつとに有名です。

2002年同物理学賞受賞の小柴昌俊博士も
著書『物理屋になりたかったんだよ』の中でこう述べています。
「たしかにわたしたちは幸運だった。
でも、あまり幸運だ、幸運だ、とばかり言われると、それはちがうだろう、
と言いたくなる。幸運はみんなのところに同じように降り注いでいたではないか、
それを捕まえるか捕まえられないかは、
ちゃんと準備をしていたかいなかったかの差ではないか、と」。

そこで、西洋の言葉には「セレンディピティ」という便利な一語がある。
“serendipity”とは、オックスフォード『現代英英辞典』によれば、
「楽しいものや思いがけないものを偶然に見つけること。あるいはその才能」とある。

セレンディピティの研究でいくつかの著書がある澤泉重一氏は、
偶然の中から何かを察知する能力として、
セレンディピティを「偶察力」と名づけています。

氏はまた、人生には「やってくる偶然」だけではなく、
「迎えに行く偶然」がある
といいます。
つまり後者は意図的に変化をつくり出して、そこで偶然に出会おうとする場合をいう。
その際、事前に仮説をいろいろと持っておけば、何かに気づく確率が高くなる。
基本的に有能な科学者たちは、こうした習慣を身につけ、
歴史上の成果を出してきたと氏は分析します。

パデュー大学のラルフ・ブレイ教授によれば、
セレンディピティに遭遇するチャンスを増やす心構えとして、
「心の準備ができている状態、
探究意欲が強く・異常なことを認識してそれを追求できる心、
独立心が強くかつ容易に落胆させられない心、
どちらかというとある目的を達成することに熱中できる心である」としている。
(澤泉重一著『セレンディピティの探究』より)

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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