『蟹工船』を超えて ~働く個と雇用組織の関係

2008.08.05

組織・人材

『蟹工船』を超えて ~働く個と雇用組織の関係

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

従業員を食い物にする搾取企業はある。しかし他方、会社を食い物にする依存心どっぷりの従業員もいる。会社と従業員は所詮、キツネとタヌキの化かし合いなのか・・・

他律的な処方箋としては、
法律の規制、報道メディアによる指摘・糾弾、バイヤー側の不買運動などがあるでしょう。

ともかく、企業家は高邁な人格者とはかぎらないわけですから、
(また、当初はそうであっても、過剰な成功が彼を狂わせるときもあるので)
自律、他律、個人、組織、社会とさまざまな方位から、
統合的に正しい経営の道を進んでいけるよう
彼を導いてやるしか方策がないのだと思います。

◆働き手よ、成り下がるな!
そして、最後は、やはり、働く側本人の生きる姿勢こそ決定的です。
そうした過酷な労働現場に身を置かなければならなくなった状況は、
人それぞれにあるでしょう。
人生はもともと不平等ですし、理不尽ですし、運不運が左右します。
しかし、不遇があれ、不幸があれ、幸福をつかむ人はたくさんいます。
結局、成り上がるも、成り下がるも、自分の意志・努力次第なのです。
(そう言えるほど、平成ニッポンの世は、人類史からみれば最良の時代のひとつです)

だからこそ、一人でも多くの働き手が、
「蟹工船」的な職場を選択肢として排除できるようになるほどの
技能と就労意識を持つようキャリア教育の分野で何かしらの貢献ができないか――――
それが私の事業目的のひとつでもあります。

◆キツネとタヌキの化かし合い?
さて、ここからは広く「働く個(従業員)と雇用組織(会社)の関係」を考えます。

私は、両者の関係は、象徴的に図のような3つの極があると感じています。
1つめは、冒頭触れたように、
会社が労働者に過酷な労働を強い搾取するという「蟹工船」の極。
2つめは、逆に、
従業員が組織に依存べったりで自らの保身に浸る「ぶらさがり」の極。

私はキャリア教育研修の現場で、働き手側のいろいろな就労意識に接していますが、
ほんとうにひどい依存心、保身・安住意識、怠慢さ加減を目にすることもしばしばです。
(私が経営者であったらなら、その場で説教のひとつでもしたくなるような人はたくさんいます)

この「蟹工船」と「ぶらさがり」の2つの極は、
いずれも従業員と会社のネガティブな関係です。
でも、世の中には、このネガティブゾーンの関係は実は多いと思います。

会社側は、できるだけ労働者を効率的に安く多く働かそうとし、
労働者側は、できるだけ安全にラクをしようとする・・・・・
まさにキツネとタヌキの化かし合いです。
会社と従業員は、この2つの極の間のどこかで折り合い、
両者とも「しょーがねぇなー」という冷めた感じで雇用・被雇用関係を維持していく。
その会社に組織員が共感を呼ぶ事業理念がない、あるいは、経営者自身に魅力がない、
したがって、結果的に組織全体に求心力のない会社は往々にしてこうなりがちです。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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