フジテレビ・「結婚披露宴」参入の手堅い戦略

2008.07.24

経営・マネジメント

フジテレビ・「結婚披露宴」参入の手堅い戦略

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

フジテレビが結婚披露宴事業に参入した。企画・運営会社設立し、スタジオで披露宴をとり行うサービスまで展開するという。ちょっと考えると「テレビ局で結婚式?」と思ってしまうが、実は意外と手堅い戦略であることがわかる。

<フジテレビ:結婚披露宴の企画・運営事業に参入。お台場の本社屋などを利用>
http://news.livedoor.com/article/detail/3740095/
<事業領域拡大の一環として、東京都港区台場の本社屋など、同社が保有する施設を活用><テレビ番組制作の技術やノウハウが生かせることや、婚礼付帯商品やサービスなどにおいてグループ企業へのシナジー効果が期待できるとしている>ということで、フジテレビの「事業多角化戦略」である。
事業の多角化は、成功すれば大きく利益を拡大させることもできる反面、常にリスクがつきまとう。上記の報道にあるとおり、いかに既存事業とのシナジーを発揮できるかが大きなポイントとなる。
その点からすると、今回のフジテレビの展開はかなり手堅い展開であることがわかる。

イゴール・アンゾフが1965年に著した「戦略経営論(Strategic Management)」にある「成長マトリックス」で考えてみたい。
企業が製品(サービス)を提供する対象が「既存市場(既存顧客)」に対してなのか、「新市場(新規顧客)」なのか。提供する製品・サービスが「既存製品」なのか、「新製品」なのか。その要素を掛け合わせ、「市場浸透」「新製品開発」「市場開拓」「多角化」という4つの象限ができ、各々の象限が成長戦略のパターンを表わしているのである。
以下、フジテレビにあてはめて考えてみよう。

■市場浸透戦略
既存顧客を深掘りし、使用頻度を高めることを目指すものであるがが、昨今のテレビ業界は視聴者と広告主の確保ともなかなか難しいのが現状だ。この象限で勝負できない故の新展開といえるだろう。

■新製品開発戦略
新製品を、現在の顧客に投入する戦略。生活者の視聴という対象をテレビからWebサイトに代えコンテンツを提供。そこで広告主に新たな媒体を提供するのもこの戦略にあたる。正に勝負のしどころであるが、なかなか「これ!」という戦略が描けていないのも事実だ。

■多角化戦略
全く新しい製品を新たな市場・顧客に向けて展開する戦略。最も大きなリスクがあることは間違いない。いくつもの打ち手を展開しているが全てをここで紹介するのは難しいため、今回は割愛する。

■新市場開拓戦略
既存の製品を新しい顧客へ提供する戦略。海外などの地理的に異なる新たな市場に進出したり、全く属性が異なる顧客層にアプローチする場合がこれにあたる。今回の「結婚披露宴の企画・運営事業参入」は生活者を「視聴対象者」ではなく、新たなビジネスの新規顧客ととらえ、既存のテレビ局内の資産を活用した製品を提供するというパターンと考えられるからだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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