小売店の競争マイオピア

2008.06.25

仕事術

小売店の競争マイオピア

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

小売店の「業態別」の成長(成熟)度合いを把握するため、 「製品ライフサイクル」 に当てはめてみます。

成長初期にあるのは「ネット通販」ですね。

一方、加速成長の時期にあるのが、
ユニクロ、無印良品、ヤマダ電機などの「大型専門店」です。

「コンビニエンスストア」は成熟期に入ってますね。

そして、成熟期から衰退期へと移りつつあるのが、

イトーヨーカー堂、ジャスコ、ダイエー

などの「総合量販店(総合スーパー」(GMS)。

「百貨店」や「中小商店」は衰退期です。

さて、今回は、「小売の雄」と言われたダイエーが
破綻したことに象徴されますが、消費者の支持が著しく低下し、
厳しい経営状況に追い込まれている

「総合量販店」

に焦点を当てます。

私自身、時々、自宅近くのダイエーやイトーヨーカー堂に
行きますが、テナントとして入っているファッションブランド
はさておき、品揃えにほとんど違いを感じません。

つまり、どの総合量販店も変わり映えがしないため、
あえて特定の店舗を選ぶ理由がほとんど見つからないですよね。
(距離的に近い以外は)

ただ、一時期、イトーヨーカ堂グループに在籍されていた
元伊勢丹バイヤーの藤巻幸夫氏によれば、同店の衣料品の品質
は価格的にみて非常に優れているとおっしゃっていましたが。

総合量販店の品揃えが似通ってしまうのはなぜでしょうか?

それは、商圏内の競合他店との競争において、
違いを出そうとするのではなく、逆にお互いに模倣しあう結果
であるという研究があります。

なぜ模倣しあうのでしょうか?

それは、商圏内の消費者の衣食住にわたる幅広いニーズに、
大量仕入れで販売価格を引き下げ、大量販売を狙う総合量販店
としては、そうするしかないからです。

つまり、ひとりでも多くの消費者に商品を買っていただくためには、
あまりとんがった個性的な商品を並べるわけにはいきません。

どうしても、無難で平均的な品揃えになってしまうのです。

また、他店で売れ筋の商品があれば、
それを黙って指をくわえて見ているわけにはいきません。

消費者にも、

「あの店には置いてあったのに、
 どうしておたくには置いてないの?」

と言われてしまいますしね。

そこで、同じ、または類似商品を仕入れざるを得ない。

こうして、商圏内の同じ消費者を奪い合っているはずなのに、
競合店舗と差別化しようとするのではなく、逆にどんどん

「同質化」

していくということが起きるのですね。

田村正紀氏(同志社大学教授)は、この現象を

「競争マイオピア」

と読んでいます。
(マイオピアとは近視眼的行動の意味)

この同質化現象は「ゲーム理論」でも説明できるようです。

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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