サプライヤは常に「どの企業と組むのが自社にとって最も得策か」を見定めています。それでは、彼らから選ばれ、共に成長するためには、どのような手法が考えられるでしょうか。
前回のメルマガでは、調達購買部門が持つ目利き力と、サプライヤを「自社のファン」にするエンゲージメント力によって、サプライヤ基盤を強化することが、今後求められるという話をしました。
一方で、昨今の地政学リスクの高まりや深刻な人手不足、原材料価格の高騰など、調達・購買を取り巻く環境は、かつてないほど厳しさを増しています。こうした時代において、企業の競争力を左右するのは、個々のサプライヤとの強固な信頼関係、すなわちサプライヤエンゲージメントを高める力です。
サプライヤは常に「どの企業と組むのが自社にとって最も得策か」を見定めています。それでは、彼らから選ばれ、共に成長するためには、どのような手法が考えられるでしょうか。私は、このサプライヤエンゲージメントを高める仕組みをサプライヤモチベーションマネジメントと呼んでいます。
なぜなら、個人任せではなく、仕組みとして定着させることが必要だからです。サプライヤモチベーションマネジメント手法には、「これをやっておけば大丈夫」という万能策はありません。エンゲージメント力を高めるために、さまざまな手法のアイディアを抜け漏れなく検討し、実践し、効果を確認しながら定着させていくことが重要なのです。
サプライヤモチベーションマネジメントの手法は、6つの軸で捉えられます。1つ目の軸は「パーパス共有と信頼関係づくり」です。
従来、サプライヤに対する情報共有は、短中期的な生産情報の共有が中心でした。それに対して現在求められているのは、経営目的や経営理念、将来展望、製品・事業のロードマップの共有です。
これは、バイヤー側がサプライヤに情報を共有するだけでなく、自社がサプライヤの経営目的や理念に合っているか、という逆の視点も求められます。
信頼関係づくりという点については前回のメルマガでも触れましたが、サプライヤを自社のファンにしていくことが重要です。一緒に新しい事業・技術・製品で、新しい時代をつくっていく。そんな想いを共有し、サプライヤを自社のファンにしていく必要があります。
2つ目の軸は「コミュニケーションの進化」です。従来は担当者間のやり取りや、年次総会などの1対nのコミュニケーションや挨拶中心の表敬訪問が中心でしたが、これを、マネジメント同士で双方向の課題解決を話し合う1対1のビジネスレビューMTGへと引き上げていくことが求められます。
さらに、定期的なサプライヤ本社・主要工場への訪問、VoS(Voice of Supplier)の活用など、新たな取り組みを試していくことが肝要です。
3つ目の軸は「契約・インセンティブの提供」です。評価が良いサプライヤに対しては、発注シェアを拡大するなどのインセンティブ提供が不可欠です。また、場合によっては、プリファードサプライヤ
契約やLTA(長期供給契約)の締結など、サプライヤへの約束を明文化することも重要な施策となります。
4つ目の軸は「情報共有と協働」です。従来の生産情報の共有に加え、技術情報や、自社顧客を含むサプライチェーンの下流が何を求めているのかといった顧客情報の共有も含まれます。
協働の観点では、代替品提案を含むVAVE提案や、提案採用時のゲインシェアの仕組み整備に加え、近年では、バイヤー企業が課題を提示し、提案を募る、リバース展示会の開催なども、協働が進んだ形と言えるでしょう。
5つ目の軸は「QCDの最適化」です。品質面では、過剰品質や自社規格の見直し、デリバリー面では、リードタイムやMoQの適正化、支払条件の見直しなどが挙げられます。また、従来の調達購買部門ではタブー視されがちな適正価格への見直しも重要です。ここは、サプライヤの営業担当者にとって、関係性強化の障壁となっているケースも多く、適正なニーズの見極めと、自社製品への価格転嫁の仕組みとつなげていく必要があります。
最後の6つ目の軸は「育成・支援によるサプライヤ体質強化」です。特に、東南アジアなどの新興サプライヤに対しては、技術・生産・品質管理といった自社ノウハウを提供し、改善を共に進めていく
ことが有効です。また、サプライヤの人材育成支援や金融面での支援も効果的です。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。
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