サーバント・リーダーシップの時代(2) 「自分らしく輝く」のではなく、「自分らしく勝てる」ように考えるのが上司の役目

2025.08.25

経営・マネジメント

サーバント・リーダーシップの時代(2) 「自分らしく輝く」のではなく、「自分らしく勝てる」ように考えるのが上司の役目

村上 和德
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

サーバント・リーダーシップの文化を醸成するため、普段から何を意識しておくべきか。 私は、「相手の座標軸を理解する」ことが重要だと考えています。人はそれぞれ異なる座標軸を持っています。善悪、勝ち負け、損得、新古、好き嫌いなど、さまざまな座標軸があります。例えば、勝ち負けという座標軸を持っている人に、「こうやったほうが正しい」と言ってもあまり響きませんが、「こうしないと勝てない」と言えば響きやすくなります。 その人が大切にしている座標軸で語ること、それがサーバント・リーダーシップの第一歩です。つまり、主体はリーダー側ではなく相手にある。サーバント・リーダーシップというのはサービス業であり、サービスを受ける相手は部下や従業員で、その部下の座標軸を知るところから始まります。

石垣型のサーバント・リーダーシップを身につけなければ、日本型のダイバーシティは成功しない、というのが私の持論です。石垣にはさまざまな形、大きさの石があります。三角の石はそれ単体では良さは生かせませんが、周囲の石があって初めてその形が生きるのです。「人間はこうすれば幸せになる」「うちの社員はこうやったらうまくいく」と、ひとつの型枠に嵌めるのではなく、人間関係の中で部下を健全に導き、その人らしさを生かして勝たせるのが、サーバント・リーダーシップの本来の目的なのです。

部下を束ねるマネージャーには、「部下が『自分らしく』勝てるように考えるのがサーバント・リーダーシップだ」と伝えています。できないとわかっていることをやれと言うのではなく、できるように営業プロセスを仕組むのがマネージャーの仕事です。自分ができることをひとつずつクリアしていくことによって、徐々に難易度の高い営業ができるようになっていくものです。サーバント・リーダーシップは、受ける側の部下の個性を生かすという目的を持っています。

しかし、安易に「君たちは君たちらしく輝けばいい」と言うべきではありません。部下が勝てるために支えなければならないのです。「ここでしか働きたくない」「この部署は嫌だ」などと言っている場合ではないのです。これは、「らしさの誤解」というもので、人は簡単に「自分らしさ」を語るべきではないと思っています。特に若手のうちはそうです。自分らしさを気にする前に、むしろ悩むべきは、「どうすればそのお客様らしく提供できるか」であり、「自分はこれでいいんだ」と思った時点で、そこで成長は止まってしまいます。パフォーマンスに関しては大人としてシビアに考えなければなりません。

チームメンバーが手をつないで信頼の絆でつながっていること

この奉仕型のリーダーシップは、社員一人ひとりの「Want to」を把握し、理解することから始まります。社員が「Want to」で「ご機嫌」に仕事できる環境を整えることが、リーダーの重要な役割になります。では、どのように奉仕するのか。

一般的なリーダーシップではリーダーとフォロワーという縦の関係性を考えがちですが、サーバント・リーダーシップは違います。

例えば、次のような場面を思い浮かべてみましょう。

スタートからゴールまで、リーダーがスタッフ4人を連れてゴールに向かっています。スタッフは性別や年齢、身長もさまざまで、1人は180センチ、1人は150センチ、女性もいれば70歳の方もいます。さらに、スタッフ全員が、目が見えない状態です。リーダーだけにはゴールの位置と道筋が見えていますが、リーダーがスタッフに直接触れることはできません。どうしたらチームを最速でゴールまで導けるでしょうか。

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村上 和德

ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。

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