コンサルタントとして経験を積まれてきたパスファインダーズの日沖博道さんは、事業承継した後継者が苦労している現状を解決したいとの思いから、後継経営者層を主な対象とした経営戦略研究会を立ち上げました。事業承継の実態はどうなのか、後継者の苦労とは何か、日沖さんにお話を伺いました。
猪口 創業者の成功体験が邪魔をしてしまうこともありそうですし、創業者も数々の失敗を繰り返した上の現在です。
日沖 新規事業は簡単ではありません。私たちも大企業の新規事業を数多くお手伝いしてきましたが、大企業ですら新規事業は決して簡単ではなく、ただの思いつきではうまくいかないからこそ相談がくるわけです。新規事業を集中的にいくつも手がけていれば、避けるべきパターン、うまくいかないパターンもそれなりに分かってきます。しかし、経験の浅い後継者が簡単に新規事業を立ち上げられるかというと、そんなに甘くはありません。それこそ創業者が過去に失敗してきたことを繰り返す羽目になりかねません。
当然ながら、後継者は社内での信頼が最初からあるわけではなく、経験もない。それまで他の会社にいて、業界のこともよく分かっていない。本業で大した実績があるわけでもない。社員たちは口には出さなくても、「若社長、ちゃんとできるのだろうか」という目で見ていて、すぐに協力してもらえるような体制もない。そのような状況なので、後継者は、自分が引き連れてきたメンバーや最近雇った若手に協力をしてもらうようになります。そうして出てきたアイデアに悪くないものがあったとしても、創業者や既存の幹部から、「経験もないのに、頭でっかちに考えて好きに言っているだけで、できるわけがないだろう」と言われてしまって、計画はなかなか進みません。
一方、後継者の側からすると、旧態依然とした頭が固い人たちの抵抗によって阻まれても、その人たちを説得するだけの材料もない。言われた通り頭の中で考えているだけなのも事実で、いろいろ調べたとしてもたかが知れている。調査して戦略を考えたつもりでも、穴がたくさんあることは分かっている。経験則も足りず、いろいろ言われるたびにポシャってしまう。このような実態があるわけです。
猪口 そうした中で、どのように突破口を見出していけばよいのでしょうか。
日沖 いきなり新規事業に飛びつく前に、まず問うべきなのは、「本業をもっと良くすることはできないのか」ということです。確かに今までのやり方を変えなければいけないとして、ではどのようなことができるのか、本業の再生や見直しが十分できているかが問題なのです。羅針盤倶楽部では初期診断の中で、これまでどういったことをしてきたのか、本業再生への投資は十分にしてきたのか、本業に再生のポテンシャルがあるかを分析します。ポテンシャルがあると判断すれば、まずは本業再生にトライするのが基本です。
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