【インサイトナウ編集長対談】 中小企業の後継者に寄り添うコミュニティ「羅針盤倶楽部」を開設

本業か新規事業か

猪口　先ほど、二代目を引き継いで不安をお持ちの方が多いというお話がありましたが、初期診断では、具体的にどのような課題に悩む経営者が多いと感じますか。

日沖　そもそも本業が順調であれば、そう悩むことはありません。売上が伸び悩みどころか、むしろジリジリ下がっている。コストが上がる一方で、売上が大して伸びないために利益が出てこない。従業員にしてみれば賃金が上がらないのは面白くないし、ずっとこの会社にいても埒があかないと思うのではないか。そういったことが経営者としてどうしても心配になるわけです。何とかしなければいけないのは分かっていても、今のやり方を続けてもうまくいくとはとても思えない。むしろ先々さらに悪くなる一方なのではないか。このような不安が出発点になります。

そこで、本業を良くするのか、それとも見通しが立たない本業に見切りをつけ、いっそのこと新規事業に打開策を求めるのか、大きくこの2つに分かれるわけです。

猪口　引き継いだはいいものの本業が今ひとつという今のお話は、企業経営の根幹に関わる話です。

日沖　だからこそ羅針盤倶楽部は「経営戦略研究会」であり、そこでどうするかがある意味分かれ道になるため、「第二創業期を迎える」としているわけです。「後継者に引き渡すタイミングである」という意味と、「事業そのものが分岐点を迎えている」という意味の両方があります。

猪口　環境が大きく変化している今、新規事業を考えざるを得ない状況ということですね。とはいえ、これまでサラリーマンを続けてきて、いきなり会社を引き継ぐことになって新規事業と言われても、相当ハードルが高いですよね。

日沖　そうなんです。創業者には、過去に新規事業を立ち上げてきた経験則があります。当たり外れはあるものの、自分が立ち上げて失敗しても自分の責任という感覚があるので、思い切っていろいろやってきているわけです。あまり大っぴらに言っていなくても、実は新規事業を過去に何回も立ち上げて、何回も失敗している。そのうちのひとつがたまたまうまいくいって本業になっているだけ、という会社は意外と多くあります。ですから創業者には、自分は今さら新規事業に取り組む年齢ではないけど、若い後継者ならいろいろ考えればいいじゃないかという気持ちがあるのです。それで、「新規事業をやってもいいけど、こいつらから出てくるアイデアはどうもパッとしない」などと、ダメ出しをする側に回ってしまう。