コンサルタントとして経験を積まれてきたパスファインダーズの日沖博道さんは、事業承継した後継者が苦労している現状を解決したいとの思いから、後継経営者層を主な対象とした経営戦略研究会を立ち上げました。事業承継の実態はどうなのか、後継者の苦労とは何か、日沖さんにお話を伺いました。
さらに、いざ入社して後継ぎとして歩み始めると、この商売はけっこう大変だという実態が見えてきて、このままこの商売を続けていくのか、それとも新規事業を立ち上げて方向転換すべきなのかで悩むことになります。
猪口 たしかに、後継者にとっては大きなハードルになりそうですね。そうした問題に対して、羅針盤倶楽部ではどのような支援をされているのですか。
日沖 羅針盤倶楽部では既存経営者に対する事業改善のサポートも行っていますが、すでに後継ぎが決まっている、もしくは可能性が高い人たちに対して、事業承継の後に次の経営者として自信を持って経営するための訓練の場も提供しています。私はコンサルタントですが、中小企業の場合、費用面での問題が大きく、本格的なコンサルティングを受け続けるのは難しいのが現実です。そこで羅針盤倶楽部では費用を抑えるため、コンサルティングではなく研究会という形にしました。
猪口 それで倶楽部と名付けて、コミュニティという形で運営されているのですね。
日沖 ええ。羅針盤倶楽部が採用しているのが研究会形式です。プロジェクト的な課題についてご自分たちで考えて対処するのですが、その過程で定期的に相談することができます。相談の場(ワークショップ)には他の中小企業の経営者も参加しているため、課題をシェアして、どのような壁にぶち当たり、どのようなことで悩んでいるかを話します。その課題について、私たち運営と他の参加者も交えて意見交換を行い、それぞれの経験から得た知恵を互いに持ち寄って授けます。費用面ではプロジェクト形式よりも大幅に安く抑えることができますが、その分本人が自主的に取り組む姿勢が求められます。
猪口 ワークショップのテーマや課題は、倶楽部メンバーやワークショップに参加される方々の意見を事前に吸い上げて決めるのでしょうか。あるいは、決まったアジェンダがあるのでしょうか。
日沖 羅針盤倶楽部では、大きなアジェンダとして最初に2つのテーマを決めて、それぞれ分科会に分かれて研究・実践を行っています。ひとつが「フォーカス戦略」で、自社の得意領域を特定し、そこに集中することで強みを磨き、収益を高めます。もうひとつが「新規事業」で、新たな領域でのビジネスをいかに企画・開発し、確立するかを探ります。
2つの分科会のどちらに参加するかは、入会後に初期診断を行って相談しながら決定します。この初期診断は、あらかじめいただいた会社データをもとに弊社で分析するものです。分科会が決まったら、たとえば、「貴社にはこのような課題があるので、新規事業の開発をメインにしましょう。そのためには、社内でこういう体制を整えて、こういうやり方、こういうところにフォーカスをして検討していく必要があります」というように、最初に実施するオリエンテーションで進め方についての相談をします。その後は、実際に進めていく中で出てくるさまざまな課題をワークショップに持ってきていただき、相談しながら打ち手を考えていきます。
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