企業における「顧客」とは?

2025.05.14

経営・マネジメント

企業における「顧客」とは?

村上 和德
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

「事業の目的は顧客の創造である」とは、経営の神様と呼ばれる、ピーター・ドラッカーの言葉です。一見、当たり前とも言える言葉ですが、経営者や顧客に対応する営業が、本当に自分たちが取り組むべき「顧客」を創造できているかを考えると、十分とは言えない企業が多いのも事実です。

この本当の顧客のことを「適格見込客」と呼んでいますが、この適格見込客をそのペルソナとともに明確にします。ペルソナは、BtoBでも非常に大事なことです。ここでもまた「ペルソナ」を軽く考えてしまい、「キーマンは部長、〇歳、趣味はゴルフ」などと結論付けてしまうケースもたびたび見受けられます。しかし、ペルソナの深堀は、営業現場レベルで済まされる話ではありません。重要な経営戦略のひとつです。ペルソナの明確化を経営上層部で深掘りしていきます。

BtoBでペルソナを考える場合、特に重要なことは、「顧客の顧客」です。顧客が取り組むべき顧客は、どのような業種で、どのような従業員が働き、どのような戦略を持ち、戦略に対する課題を解決していかなければならないのかを経営陣と練る必要があります。

これは私のお客様である、ある建設デベロッパーの事例ですが、当時は、単純に物件のクオリテだけで競合会社と勝負できる状況ではありませんでした。立地条件が良く、新築の賃貸物件であれば、Webサイトに掲載するだけで、多くの引き合いが来るでしょう。しかし、物件の条件がそうでなければ、単純にWebサイトに掲載するだけでは、入居者を集めることはできません。顧客を創造しなければならないわけです。

具体的な手法は、ここでは伏せておきますが、周辺環境を考慮したうえでペルソナを設定し、アプローチを徹底しました。そして、法人営業によって、高い稼働率を実現しました。

この適格見込み客像の明確化は、人づくりにも影響を与えます。適格見込み客が誰なのかを明らかにしまいままでは、人づくりはできないはずです。その顧客像に合った提案、接客、コミュニケーションが必要となるからです。私は、営業、マーケティングに関連する人材育成にあたっては、適格見込客の明確化からのプロセスを踏みますが、現実には、こうしたプロセスを経ている人材育成プログラムは少ないのではないでしょうか。

経営という仕事には、「顧客の創造」と「顧客価値の提供」の2つしかないと考えています。この2つがあって初めて商売は成り立ちます。つまり、「顧客は誰か」を見極めること、そして「その顧客を笑わす術(喜ばせる術)」を持つことが顧客価値の提供です。企業が提供するすべての商品やサービスには、それを必要とし、選んでくれる顧客が不可欠です。どれほど優れた商品やサービスを用意しても、顧客がいなければ事業は成り立ちません。

一人ひとり違う顧客に対して、何を価値として届けるべきか。その答えを探るためには、まず「顧客を知る」ことから始めなくてはなりません。対象とする顧客が定まらないままどれだけ努力したところで、成果は上がりません。だからこそ、この問いに徹底的に取り組む価値があるのです。

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村上 和德

ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。

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