BtoB営業の現場では、BtoCの場合とは異なり、多くの場合、相手となる企業の数は限られます。そして、顧客ごとに優先すべき課題は異なります。つまり、企業ごとに明確なアプローチ戦略が求められます。営業戦略を考えた場合、当然、商材や顧客によって変わりますが、基本的にクライアントが求める価値は大きく3つしかありません。その3つとは・・・
「ドゥ(行動)」を変えなければ、結果を変えることはできません。まず「ドゥ」によって結果が変わる状態を目の当たりにすることで、考え方が根底から変わることになるのです。
こうして、ビフォーを数字で明確にし、アフターの結果を数字で出す。「数字で物を語る営業」になることにつながっていきます。
ソリューションは顧客によって異なる、USPを明確にする
私の新人のときのエピソードを紹介します。新人営業の研修の中で、「お客様の3,000万円の大口定期が満期になる。このとき、あなたならどう提案するか」という問題が出たことがありました。当時の教科書的な模範解答は、「1,000万円は株式投資、1,000万円は投資信託、1,000万円は貯蓄商品。つまり、積極的にキャピタルゲインを取るもの、そこそこのリターンを狙うもの、安全なものに分けて資産運用を勧める」というものでした。これは、新人研修の場合はある意味正解だと思います。現在でも、リスクを分散しながら手堅く収益を狙うという考え方は、主流だと言えます。
しかし、私は当時から「顧客のニーズに沿った提案が必要」だと思っていましたので、手を挙げてこう言いました。「3,000万円の預金が満期を迎えるにあたり、この資金をもとに、今後さらに資産を大きくしようとお考えかもしれません。ほかにも資産をお持ちの可能性もあります。私でしたら、一番自信のある株式銘柄を5,000万円買ってくださいと提案します」と。模範解答にはほど遠い答えでしたが、会場は、受講者からの拍手に包まれました。
当時の自分が感じていたのは、そもそも顧客の立場や状況によって最適な提案は変わるはずで、そこに正解不正解はないということです。顧客一人ひとり、状況ごとに最適解は変わります。だからこそ顧客は誰なのか考え抜いて提案する力が必要なのです。この考え方は、私の営業研修や人材育成の根幹になっています。
ここで役立つのが、商品そのもの以上に強いメッセージであるUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)という考え方です。USPとは、マーケティングの巨匠ロッサー・リーブスが提唱した理論で、自社にしかない特徴的な価値を繰り返し訴求して、顧客の記憶に残るようするマーケティング手法です。
例えば、これはBtoCの事例ではありますが、ドミノ・ピザの「30分以内にアツアツのピザを届けます。もし30分かかったらお金はいただきません」というキャッチコピーがUSPになります。商品の美味しさそのものではなく、ドミノ・ピザならではの価値あるメッセージが記憶に残り、「出前をとりたい」と思ったとき、まずそのコピーが頭に浮かびます。
また、「吸引力が変わらない」と訴求したダイソンの掃除機も秀逸です。これまでは、吸引力の強さばかりが訴求されていましたが、本当の消費者のニーズはどこにあるのかを考えたゆえの販売戦略だったと言えます。
そのためには、顧客とは誰かを明確にし、本質的な願望、ニーズを、できれば数字とともに明らかにする必要があります。その際、消費者が欲しいのは、その商品そのものではありません。あくまで、その商品が生み出すメリットです。前述したように、法人営業の際に顧客が求めていることは、「売上向上」「利益向上」「業務効率化」の3つなのです。
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2009.02.10
2015.01.26
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長
1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。
