モノが買えない時代-その1-

2022.04.13

経営・マネジメント

モノが買えない時代-その1-

野町 直弘
調達購買コンサルタント

これまでの時代が変わり、今までの前提が通用しない「モノが買えない時代」になりました。そのため、あらゆる資材原材料の高騰や、価格高騰だけでなく、サプライヤの供給力不足で悩まさられる構造変化が起きています。 1.高すぎる 2.運べない 3.売る気がない という、構造的な変化が起きているのです。 我々はこの構造変化にどう対応すべきでしょうか。

このような事業・製品のポートフォリオの構造変化は、モノが買えない時代における打ち手に影響を与えます。

従来、供給リスク対応はサプライヤリスクマネジメントの観点から全社的なリスクマネジメントの観点から進められてきました。全社的なリスクマネジメントはリスクの洗い出し、リスクの影響度と発生確率の評価、対応策の抽出、対応策の実行と評価、といった一連のプロセスで進めていくのが一般的です。

一方、今般の「モノが買えない時代」における供給リスク管理は、今までのような全社一括的なアプローチは向いていません。事業ポートフォリオの構造変化に伴い、事業・製品毎に考えられる打ち手が変わってくるからです。

より、きめ細かく、この事業・製品の、この品目カテゴリーについては、このように対応する、先手を打って、このようなサプライヤとの関係性作りを行っておく、など、カテゴリーマネジメントの視点がより重要視されるでしょう。

具体的には、グローバルで競争を行う事業や製品は、グローバルで生産拠点を分散し、調達についても、グローバルでマルチソース化やマルチファブ化(複数拠点からの調達)を進める必要があります。

このような事業・製品においては、絶えず調達拠点をグローバルで探したり、複数のソース先のシェアのコントロールなどが求められるでしょう。

一方で、地産地消型のローカル事業・製品は、汎用的な調達品以外は、マルチソース化、マルチファブ化を行う、経済合理性はあまり高くありません。大量生産を前提としていないからです。これらのローカル事業・製品に対しては生産枠取や長期発注、先行発注などでサプライヤに在庫を持ってもらう方式か、自社で在庫を持つ、などの対応が、適応可能な手法となります。

このように、「モノが買えない時代」のサプライヤ供給力不足への対応は、対象となる自社の事業・製品や対象品目に合った対応を、きめ細かく検討~実施することが、必要となってくるのです。

これは将来的には、調達購買組織体制にも、影響を与えます。従来であれば集中購買化、調達購買組織の集約化の方向で組織体制整備が進んできましたが、特に、花形事業の調達体制は、スピード重視であり、事業毎の分散購買組織の方が適しているでしょう。

同事業では、品目カテゴリー毎の横串機能よりも事業・製品の縦軸機能が、より重視され、ソーシング機能だけでなく、デリバリー機能強化が求められます。ここでは、調達計画機能強化なども、調達購買組織が担うべき、主要機能となってきます。

一方で、次回以降で詳細は触れますが、「モノが買えない時代」においては、サプライヤマネジメントの機能は、より重要視されていきます。この機能は全社横串で、会社対会社の関係性強化などが必要となるため、横串機能もより重視されていくでしょう。

このように、環境変化や事業・製品特性に応じた、調達購買体制の見直しが求められてるのです。

次回はモノが買えない時代のサプライヤ供給力不足という課題に対して、どのような対応を進めるべきなのか、について、もう少し詳細に、私の考え方を提示していきます。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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