成果主義・ジョブ型採用のもとで考えるべき2種の人材ポートフォリオ

画像: マクダーミッド ジャパン

2021.11.22

組織・人材

成果主義・ジョブ型採用のもとで考えるべき2種の人材ポートフォリオ

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

HR部門が「スキル観点」の人材ポートフォリオを考えるのは、もはや当然のことです。しかし人材がますます流動化する昨今、さらには成果主義やジョブ型採用が広がる流れの中では、これだけでは不十分です。「就労意識観点」ともいうべき人材ポートフォリオを持つ必要があります。

〈タイプⅣ〉選り好み的流転の性向:「タンポポの種」型
「ワーク・ディベロップメント意識」が弱く、かつ、転職などのキャリア環境の変化にあまり抵抗を感じない人たちです。仕事の内容よりも、好条件の待遇を常に探し回る態度になります。フワフワと居場所を変える「タンポポの種」状態になりやすいタイプです。


組織にどんな就労観を持った人間を集めたいか

どの組織にもこれら4つのタイプの人たちが存在します。さて人事部門としての問題は、どのタイプの人たちを組織に多く集めたいかです。それは当然ながら、上半分のⅠとⅡ、すなわち働くことを肯定的に見つめる就労観を持ち、自律的・自導的に仕事に向き合う人たちではないでしょうか。それとは逆に、下半分のⅢとⅣ、すなわち冷淡に割り切った就労観を持つ他律的・従属的な人はあまり歓迎できません。

多くの企業において人事部門は離職率に神経質です。離職率が同業他社に比べてあまりに高い場合は問題ですが、ある割合の人の入れ替わりはむしろ健全な新陳代謝とみるべきでしょう。人が定着することを無条件に喜んでいいわけではなく、どんな性向の人が居付き、どんな性向の人が去っていくのかに注意を払わねばなりません。

Ⅰのタイプの人材はどのみち流動的です。組織を出て行くことになっても、絆化ができていれば、その後も何かしらの形で協業することもあるでしょう。また、中途採用で入社してくるⅠタイプの人たちは組織に新しい風を送り込んでくれます。

むしろ懸念すべきは、ⅢやⅣのタイプの人が組織に増え、居付いてしまうことです。彼らは組織を硬直化させ、気風をどんよりとさせ、ⅠやⅡの人を去らせてしまうことにもなりかねません。若いうちはⅡだったのが、歳とともにⅢに性向が変わっていくことはよくあることです。能力的な成長の限界感や仕事のマンネリ感などによって、働くことに対して惰性が生まれ、仕事機会を掘り起こすことをやめるからです。また、Ⅳの人がⅢに変化することも起きます。30代前半までは転職先も見つけやすく、より好条件の会社に移れたものの、能力的に実績不足のⅣタイプの人ですから、さすがに30代半ば以降は選り好みできようもなく、定住を決め込みます。

成果主義やジョブ型採用が強まるほど就労意識醸成が重要になる

こうしたことからすれば、人事部門は「スキル観点の人材ポートフォリオ」とともに「就労意識観点の人材ポートフォリオ」に無関心ではいられません。自社の従業員について上半分(タイプⅠ、Ⅱ)が優勢になるか、下半分(タイプⅢ、Ⅳ)が優勢になるかはきわめて重要な問題です。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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