「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”

画像: 「社会がつくった氷河期世代」への支援はどうなるのか(写真提供:ゲッティイメージズ)

2019.04.15

組織・人材

「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”

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 生活保護に必要な追加支出は20兆円程度――。  これは今から11年前の2008年に、NIRA総合研究開発機構が報告書「就職氷河期世代のきわどさ」の中で、「氷河期世代がこのまま高齢化すると……」という前置きで示した数字です。  当時、就職氷河期に増加した非正規雇用者は、100万人を上回る規模で残存していました。低賃金かつ不安定。十分な年金が確保されない非正規雇用の人たちが高齢化すると、生活保護受給者が増えることが予想され、「20兆円程度の追加的な財政負担」が発生するという試算結果を提示したのです。  たまたま「就職時の景気が悪かった」というだけで非正規雇用になった氷河期世代は、既に40代に突入。彼らを救い出す実効性ある政策は行われないまま、“放置”され続けてきました。

世界の常識の背後には、国際労働機関(ILO)が掲げている、「同一価値労働・同一賃金」の原則が存在します。「同一価値労働・同一賃金」の考えに基づけば、「解雇によるリスク」を補うには、非正規労働者の賃金は高くなって当然なのです。

氷河期世代は“エリート”でも苦しい

氷河期世代の問題は、非正規雇用の人にばかりスポットが当たりがちですが、厳しい競争を勝ち抜き、正社員になった“氷河期世代の勝ち組”でさえ、他の世代に比べると「社会の恩恵」を受けていないことはあまり知られていません。

例えば「アベノミクス」が盛り上がった15年11月に公開された厚労省の「賃金構造基本統計調査」によれば、全体の賃金は前年比で1.3%上昇していたにもかかわらず(男性1.1%増、女性2.3%増)、氷河期世代に当たる40~45歳男性の賃金だけ、マイナス0.6%。「大学・大学院卒」の40~45歳男性に限ると、マイナス1.1%、「大企業」の40~45歳男性だけに絞ると、マイナス2.3%と、普通であればエリートとされる人たちが、とりわけ冷たい風にさらされていたのです。

「今はまだ、母の面倒を見なきゃならないんで、なんとかなってますけど。自分1人になったら……ヤバいなぁって思うんです。生きてる意味あるのかなぁ?って」

フィールドインタビューに協力してくれた氷河期世代の40代の男性が、こうこぼしていたことがあります。

彼は氷河期に正社員の席をゲットしたものの、リーマンショックで会社が業務を縮小したためリストラにあい、その後は製造業関連会社の非正規社員になりました。

正社員で雇用してくれる会社を探し続けましたが、40歳を過ぎて正社員で雇ってくれる会社はありませんでした。

「社会から置いてけぼりに」負のスパイラル

「連敗が続くと、まるで底なし沼にいるようで。あがけばあがくほど、沈んでいく。そういう自分しかイメージできなくなってくるんです。もう、諦めるしかないって。40過ぎて母親と2人暮らしで非正規だと、世間はまともな職につけない、どうしようもない『パラサイト中年』だっていう目で見ます。親戚からは『しっかりしなさいよ』とか、『お母さんも心配してるぞ』とか言われるし、だんだんと人と関わりたくなくなるんですよ。

人と会えば会うだけ、他人がねたましくなる一方で、自分が情けなくて。なんか社会から置いてけぼりになったような気分です」

彼は苦笑いしながら明るく話してくれましたが、経験した人しか分からない重い言葉の数々に、私は、どう返していいのか分かりませんでした。

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