体罰事件から企業が学ぶべきこと

2013.02.19

組織・人材

体罰事件から企業が学ぶべきこと

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

問題となったスポーツの指導と、企業の昇進人事・管理職教育の関係について。

大阪の桜宮高校バスケットボール部の体罰(暴力)事件に続き、女子柔道でも選手達が監督を連名で告発するなど、スポーツにおける指導方法や指導者のあり方が大きな話題となっています。そして、このような指導が横行している原因の一つとして、指導者教育の不足が挙げられています。メダリストだから、実績を残した選手だからという理由で監督やコーチに据え、その人達に指導のノウハウをしっかり学ばせていない。だから、彼らは自分の経験や考えだけに基づいて選手指導を行ってしまう。サッカーでは、長期に渡る講習会などで学ぶことがJリーグの指導的立場につく際の条件になっていますし、少年・少女チームの指導者にも公認資格がありますが、そんなシステムを持っている競技は少ないようです。

これは、企業の管理職のありようと無関係ではありません。業績を根拠にして管理職への昇進人事が行われ、ロクに指導方法を学ぶことなく、自分の経験や信念に基づいて部下を指導している、というのが多くの会社の現状だからです。スポーツのように体罰という分かりやすい問題行動がないだけで、実は効果のない、誤った指導が行われている可能性は高いでしょう。もちろん、上司がそれぞれに持論や信念を持って指導に当たるのは構いません。しかし、セオリーをまったく知らずに、また、部下の年齢やその価値観の変化などを無視して、自分が受けた昔ながらの指導と同じようにやっているとしたら、それは多くのスポーツと同じであって問題です。

そもそも、管理職はメンバーとはステージが異なります。自分で結果を出すのではなく、人を動かして結果を出す役割なのであり、そのためにはプレイヤーであった時代とは異なる能力や視点を身につける必要があります。プロゴルフでは、スター選手のほとんどがレッスンプロという、プレイヤーとして過去に実績を残したのではない「教えるプロフェッショナル」についていますが、これは、自分が上手に出来るのと、人に上手に教えるのとは異なる能力が必要であることを表しています。同じように、管理職は指導のプロとしての役割が求められるのであり、会社も指導者教育にもっと注力してよいはずです。

指導者教育には、管理職研修で行われるような目標設定や評価の手法、部下とのコミュニケーションといったスキル学習も含まれますが、私には、それ以前の根本的な部分、社会人としてのありようや、部下や組織への精神的な態度に関する学びや見直しが必要であるように思います。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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