「プロコーチ」になりたい!人達の“本音”を洞察してみる。

2010.03.24

組織・人材

「プロコーチ」になりたい!人達の“本音”を洞察してみる。

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」研究員/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

プロコーチが、単に「楽な仕事」として人気になっているのではないだろうか・・。

コーチングというのは一時の流行で終わると思いきや、今やマネジメントの必須ツールとして根づいたような感じもあり、ビジネス以外にもコーチングを使おうという動きも盛んになってきています。それに連れて、コーチという職業の人やコーチングを仕事にしようという人がどんどん増えているようです。増えるのは悪いことではありませんが、これほどコーチが増殖しますと玉石混交になるのは必至で、特に気になるのは「コーチになりたい」という人達の中に、その動機がとても安易である人が少なくないからです。

一つ目は、自分の可能性に見切りをつけたのか、成長意欲を失って自らを鍛える気がなくなった人、だから厳しい環境にいたくない人には、コーチという仕事はとても魅力的に見えるはずだということです。新卒で教師になろうとするまたは塾講師など教育に携わろうとする人達にも少なからずいますが、「他人の問題にコミットすることで、自分の問題に向き合わなくて良いような気にさせてくれる仕事」なのでしょう。公教育の問題は多く、その一つに教師の資質と経験の問題が挙げられるわけですが、コーチングの世界にもこれと同じ現象が起こりつつあると思います。

二つ目は、未経験可であること。コーチングでは一般に、相手の専門分野や個別の事情を一定以上理解する必要はないとされます。答(目標や課題、実行すべきことやその計画)は相手の中にあるのであって、それを引き出すために必要なのは主として質問の力であり、こちらの経験や識見は大して重要視されません。求人票で言うなら、「未経験可」です。様々な仕事で専門分化が進み、社会も多様化・複雑化していく中で、そんな動きに必死になって着いていく必要はない、質問する力と聴く力があればOKだというのは非常に魅力的な話でしょう。

三つ目は、本音を話さなくて良い仕事であることです。普通の仕事であれば、本音をさらけ出す、語り合う、議論する、ぶつかり合うことがチームとしての成果を上げるために大切なプロセスとなるわけですが、コーチはそんなことをする必要はありません。「自分の意見を原則的には言わなくて良い(言わないほうが良い)」のですから、精神的にはとても楽です。本音を言えば、他の人の主張と異なる点が出てくるのでそれがストレスにつながるというのが普通の仕事ですが、そんなのは面倒、嫌だと考える人には格好のストレスフリーな仕事と言えます。

もちろん、コーチになりたい本人達は「クライアントの成功を支援したい」のが動機だと思っておられて、それも本心なのでしょうが、もう一つ、「成長意欲不問」「未経験可」「本音は言わなくてOK」とは何て素晴らしい仕事なんだ、というのがコーチになりたい人が増えている大きな理由でしょう。単にすそ野が広がるだけでは、コーチングという技術と考え方が個人や組織を良くしていくことにはなりません。本物のプロコーチの皆様は、無意識も含めてこのような動機でコーチをやろうとしている人達と一緒くたにされないうちに、コーチという職業に必要な資質・素養・見識などについてメッセージをされた方が良いのではないでしょうか。

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」研究員/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(マネジメント・リーダシップ・人材育成・採用)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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