コーチングの流行は、“ゆとり教育”失敗の二の舞か?

2010.04.20

組織・人材

コーチングの流行は、“ゆとり教育”失敗の二の舞か?

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」研究員/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

我も我もと企業が「コーチング」を取り入れていますが、そこに「ゆとり教育」の失敗と重なるものが見えてきます。

教科書の分量が増えることになり、「脱ゆとり」が鮮明になったという報道がなされています。円周率が3になったという枝葉がクローズアップされ、学習塾でも「ゆとり以前の内容を教えています」というのがウリになったり、企業でも「ゆとり世代がやってくる」などと言って「ゆとり=勉強不足」というレッテルを貼っているようですし、完全な失敗政策として全否定するような評価が定着してしまいました。

まだ成功・失敗と結論づけるのは早計なのでしょうが、暗記力に優れた受験秀才を評価する教育ではなく、自主性を重んじ、自分で考える力、生きる力を持つ個性を育むといったようなコンセプトは良かった訳で、これを実行できるような環境や能力が現場になかったことが問題であったのは間違いのないところだと思います。

今これと同じことが、企業でも起こっていないだろうかと考えます。流行のコーチングが言う、「押し付けすぎない・与えすぎない・自分で考えさせることによって成果が上がるようになり、人が育つのである。」というコンセプトは“ゆとり教育”とそっくりです。カリキュラムとコミュニケーションという違いはありますが、詰め込むな、考えさせろというポイントは同じです。

確かに「部下の能力を引き出し、目標達成に導くようなコミュニケーションをしよう。」「自分で気づかせることで自主性のある行動がとれる、自分で考えることが自律的に成長できる人材を育てる。」というコンセプトはいい。しかし、そのようなコーチングの考え方やコミュニケーションの仕方が、ほんとうに成果や人材育成につながるのかどうかを考えなければなりません。“ゆとり教育”の二の舞になるのではないかと思うわけです。

ゆとりのカリキュラムで生まれた時間を、現場の教師が忙しくて上手に使えなかった、どのように使うかというノウハウがなかった結果、子供がヒマになっただけで、(議論のあるところではありますが)学力も低下したわけです。企業においても同様に、現場のマネジャーに余裕もノウハウもない中で、コーチングの考え方とコミュニケーションの仕方だけが浸透したら、「教えない、押し付けない、詰め込まない」という実態だけが進行し、結果としてメンバーの知識不足、鍛錬不足に拍車をかけるだけになるのではないでしょうか。

「教えない、押し付けない、詰め込まない」というスタンスは、マネジャーにとって楽なことこの上ない。コーチングが目指すものは忘れ去られ、話を聞いている、質問しているだけで成果にも人材育成にも効果なしという結果が見えるような気がします。

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」研究員/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(マネジメント・リーダシップ・人材育成・採用)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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