優れたコンサルタントに必要なのは知力なのか胆力なのか?よくよく考えると大事な要件はある匠と共通していました。
反面、問題の所在や根本原因が判明したとしても、あるべき姿を描くスキルは単純に課題や原因の裏返しではありません。建物をブロック単位に分解した後、もう一回ブロックを積みなおしてもそれが一番よい建物だとは言えないのと同じです。建物の目的によっては異なる構造・意匠になるべきかも知れません。となると、あるべき姿は個々の会社の構成要素を理解した上での創造性が要求されます。一言でいうと自分なりの世界観を持つこと。その上で細部のバランスをとった要素の配置を行う能力が求められます。よって優れたコンサルタントはアートとサイエンスの両方を具現化できる人物なのです。
長くなりましたが、実はこれらの要件は庭師の仕事と似ているのです。庭師は樹木や庭石の特性、庭を造る土地の特性を知りつくす一方、施主の要望・好み・ライフスタイルを想定し、一つの世界観で庭をまとめます。春に花が咲く木、秋に紅葉する木、冬に枯れる木・枯れない木を知り、葉の色と形を知った上で夏に涼しさを演出するように、冬に雪が積もった時の白に対する黒を表現するように、樹木を配置するでしょう。そして縁側に立って見た構図、座敷の上座から見た構図、借景も含め全てを計算して庭石の配置をするでしょう。日本各地には数百年経っても尚、色あせない名園がいくつも存在します。
ところが誰でも名を知る庭の設計者が少ないのと同じく、分析力と構想力の両方を高い次元で融合できるコンサルタントも少ないのです。私の知る多くの人材は、分析力はあっても構想力が弱い場合が多いようです。加えて、顧客やチームメンバーを巻き込む力でスクリーニングをかけるとどれだけの人材が残るでしょう。転職情報誌Typeの最新号であるコンサルティング大特集号では「第4世代コンサルタントになるための5つの条件」の1つに、私が推奨するEQが入っている理由もそこにあるのでしょう。
答えを求めるのではなく、問題を作れるような人材、相手をその気にさせられる人材を育成するにはやはり、知識・左脳偏重の学校教育とコンサルティングファームの人材育成カリキュラムを見直す必要があるのでしょうか。
次回へつづく。
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2010.03.20
2015.12.13
横井 真人
産業能率大学 教授
個人と組織のパフォーマンス向上を研究。人の行動をスキル、知識、行動意識、感情能力、価値観等の要素に分解し、どの要素が行動に影響を与えているかの観点からパフォーマンスを分析。職場のコミュ二ケーション、リーダーシップ、チームビルディング、ファシリテーション、ソリューション営業、マーケティング等の具体的施策に視点を活用する。