ザッポスが実践する「クラウド・ブランディング」戦略

画像: Phil Simon

2015.07.27

経営・マネジメント

ザッポスが実践する「クラウド・ブランディング」戦略

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

いわゆる「ソーシャル・メディア」を通して、顧客が雲(クラウド)の中で自由に物申す時代、顧客が雲の中に入り、市場が見えなくなってしまった時代に、企業も雲の中に入り、顧客との対話を始めなければならない。今回は、アメリカの事例を紹介。

クラウド活動の先進者、ザッポス


最近、アメリカでも日本でも、「クラウド・コンピューティング」が毎日のように話題にのぼっている。その多くは、ウェブのネットワーク上(「向こう側」)に存在するリソースを活用してコンピューティングを行うという、企業主体の話に終始しているが、ここで着目したいのは、消費者の生活基盤が、SNSやブログ、ツイッターなどウェブのネットワーク上に、驚くべき速さ、そしてスケールで移行しているという、「市場のクラウド化」の話だ。

ウェブ・テクノロジーの進歩の恩恵を受けて、「自己表現の力」「つながる力」が生活者に与えられた。上に述べたSNSやブログなどもいわゆる「クラウド」のテクノロジー・プラットフォームだが、これを利用して、生活者は、企業とは無関係に活発な交流や情報交換を行っている。つまり、顧客がクラウド(雲)の中に入ってしまった結果、企業からは見えなくなり、市場が不透明化してしまっているのだ。そこで、業界や業種、あるいは規模に関わらず、企業もクラウドの中に入り、顧客と対話していくことが求められている。

だが、これをうまく実践できている企業は、アメリカでもまだ数えるほどだ。

靴やアパレルを中心に取扱っているアメリカのネット通販会社、ザッポスは、先進的なコンタクトセンターの運営ばかりではなく、いわゆる「ソーシャル・メディア」を駆使して、クラウドの中の顧客とつながるための活動に早期から着手してきた。マイクロブログのツイッターの活用を今から1年半以上も前から会社ぐるみで推進してきた、アーリー・アダプターでもある。

目指すものは、パーソナル(個別)かつエモーショナル(感情的)なつながり


アメリカでは、TVの視聴率が最も高い「プライム・タイム(夜の7時から11時の間)」のTV広告費の相場は、三十秒あたり12万5,000ドル程度といわれている。

1999年以来10年の社史のうち、ザッポスは、ほんの数えるほどしかTV広告を利用してきていない。その代わり、常に、「WOM(口コミ)こそが最高のマーケティング媒体」と唱え、一年365日を通して、24時間休みなく運営されるコンタクトセンターと、クラウドの活動に投資してきた。

オペレーターが従うべき、「コール・スクリプト」もなく、対応時間に制限もないという、常識破りのコンタクトセンターがモットーとするのは、「個々の顧客と、パーソナル(個別)かつエモーショナルな(感情的な)つながりを築くこと」だ。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業でNASAプロジェクトなどに関わり経験を積んだ後、82年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「未来企業は共に夢を見る~コア・バリュー経営~」(2013年3月発売)、「ザッポスの奇跡 改訂版 - アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。

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