今は焦って住宅を買うタイミングではない

2024.03.27

経営・マネジメント

今は焦って住宅を買うタイミングではない

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

都市部の住宅価格は買う人の年収から逆算して妥当とされるレベルをとっくに超えており、持続可能な価格レベルではない。「高値掴み」の悲劇を味わいたくなければ、冷静になって見送るのが賢明だろう。

だから住宅メーカーなどはこぞって現場DXの導入などで業務効率を上げる一方で、「パネル工法」(工場でパネル化された壁などを組み合わせて建築する工法)のレベルを上げよう、範囲を拡げようと必死になっている。今まで変化に後ろ向きだった地場の工務店でさえ、こうした新工法の導入や現場の効率化に向き合わざるを得なくなっている。

そのおかげで、世界の趨勢から遅れていた日本の住宅建築の現場も、少ない「のべ建築労働者数」で住宅を建設できるように少しずつ変わってきている。

一方で国は、建設現場などで働く外国人労働者を確保するため、大きな問題がありながら長年放置していた外国人技能実習制度を廃止して、「育成就労制度」にシフトしようとしている。つまり官民こぞって住宅供給のボトルネック解消に動いているのだ。

要は、住宅の需要は確実に下がり続け、供給体制は整う方向に向かっているということだ。

次に考えるべきは皆さんの関心の高い金利動向だ。こればかりは誰にも見通せない。だから日本経済がデフレからインフレ基調に転換したことや、国の財政状態が真っ赤っかだということから、住宅購入希望者や中小企業経営者が金利上昇不安に怯える気持ちもよく分かる。

しかし、日本経済の根本的な構造が、おカネに対する需要をそれほど生まなくなっているのは厳然たる事実だ。要は多少高い金利を払ってでもカネを借りて投資するアグレッシブな企業家が輩出し、その意欲に見合うだけの事業機会が彼らの目の前に継続的に湧き出てこないと、金利という「おカネの値段」は上がらないのだ。

せっせと内部保留を続けてきたせいもあり、日本の大企業の多くが多額の借り入れをしてまで投資したいという「喉から手が出る」ような事業機会が国内には少なくなってしまっている(ように大企業経営者の眼には映っている*)というのが、残念ながら現実なのだ。

* 小生にはまったく別の私見があるが、ここでは論点から外れるので論考しない。

「金利は経済の体温」と呼ばれる。残念ながら、体温が今後どんどん上がるほど日本経済は若くはないのだ。

だから見通せる範囲の将来、金利が大幅に上昇することは考えにくい(もちろん、政府・日銀がとんでもなく馬鹿げた財政・金融政策を連発すれば、話は変わってくる)。多くのエコノミストが指摘するように、短期金利だと当面1%以内、中期的に精々上がっても1%台で長い間推移することになるのではないか。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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