誰のための高校入試改革!?文部科学省VS大阪府

画像: Keiwa College

2015.09.03

ライフ・ソーシャル

誰のための高校入試改革!?文部科学省VS大阪府

中土井 鉄信
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表

指導要領改訂をきっかけに、他の都道府県では次々と「絶対評価」が高校入試の内申点に採用されていった中、たった一つ「相対評価」を続けてきたのが大阪府である。その大阪で2016年度の公立高校入試から「絶対評価」へ切り替わることが決まった。しかし、この「絶対評価」を採用するにあたって、「全国学力テスト」を入試に活用するという発表がでて、文部科学省と大阪府で新たな論争が・・・!

国も、この最高裁による司法判断を重いものとして受け止めないわけにはいきません。
1964年以降、2007年まで全国学力調査が実施されなかった要因の一つがここにあります。



●入試とリンクさせれば、大阪府の順位UP!?


私は、学力を測定することと、それを全国一律で実施して、序列を行うことは意味が違うと思っています。その意味で、全国学力調査に1年間で30億円から60億円もの税金が投入されるのは無駄だと思います。それよりは、教員のスキル向上や研修にもっと真剣に取り組むべきだし、その方が日本の教育には効果的だと思います。

ただ、そうした私のような「全国学力テスト無用論」を棚上げしても、今回の大阪府の全国学力テストの活用に違和感を感じざるを得ません。

文部科学省は、旧全国学力テストでの批判の再燃を恐れているのでしょう。高校入試に全国学力テストを活用することは、全国学力テストの本来の意味である学力の測定を逸脱し、過度の競争をあおる選抜試験の一つにしてしまいます。
その意味で文部科学省の大阪府への懸念は、私にとっても首肯できるものです。


だが、私が、違和感を感じたのには、文部科学省とは違ったもう一つの理由があります。


大阪府が、高校入試と全国学力テストをリンクさせた背景には、全国学力調査の全国順位を上げたいという思惑があるかもしれないからです。大阪府は、これまで全国学力調査で全国平均を下回ってきました。はっきり言うと、順位がかなり低かったのです。


この順位の低さの批判を浴びるのは知事でり、教育委員会であり、また、現場レベルでは各校長先生であったりしたでしょう。

もし、入試とリンクさせれば、中3生と先生方の全国学力テストへのモチベーションは格段に向上するはずです。



●誰のための大阪府の高校入試改革か!?


2015年全国学力テストの結果が、8月25日に発表されました。

予想通り、大阪府は、中3生の成績が大幅にアップしました。
中学数学の順位は、基礎力を問うA問題が昨年の42位から21位、応用力をみるB問題は40位から20位に大幅に上がっています


日本経済新聞(8月26日電子版)によれば『府教委は「授業で過去問を使うといった対策の成果が出た」』と語ったそうです。また、『内申点評価に活用する方針がテスト結果に影響したかどうかについては「明確に分からない」と述べるにとどめた』と言います。

一方、読売新聞(8月27日社説)によれば『松井一郎知事は「内申点への反映が決まり、生徒が本気で取り組んだ結果だ」と述べ、入試利用が好結果につながったとの見方を示した』そうです。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

中土井 鉄信

合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表

1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。

フォロー フォローして中土井 鉄信の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。