審判があえて誤審してしまう理由とは?

2012.08.16

営業・マーケティング

審判があえて誤審してしまう理由とは?

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

スポーツの審判が、「誤審」と見られても仕方のない判定・裁定を行なってしまう背景にある「心理的バイアス」には、昨日ご紹介した「集団への同調圧力」によるもの以外にも様々ありますが、今日は「不作為バイアス」を解説しましょう。

具体例を示しましょう。

野球についてのデータ分析の結果では、バッターがツーストライクと追い込まれている状況(ツーストライク・スリーボールのフルカウントは除く)で、次にピッチャーが投げた球を見送った場合、本当は「ストライクゾーン」に入っていたにも関わらず、審判が「ボール」と誤審した割合が39%もありました。

これは、ツーストライク以外で見送った場合の誤審率の2倍の数値になっています。

また、逆に「スリーボール」の状況で、次の球をバッターが見送った場合、本来ボールであったのに「ストライク」と誤審した割合は20%で、全体の11%のやはり約2倍の誤審率となっています。

なぜこのような誤審をしてしまうのでしょうか?

要するに、審判はなるべく打席を長引かせ、バッター自身に打たせて結果(アウトかヒットか)を決めさせたいという

「無意識の心理」

が働いているのでしょう。

言い換えると、自分の判定によって、1塁に歩かせたり、ストライクアウトといった結果を招きたくないということ。

まさに、審判の誤審の背景には、

「不作為バイアス」

が働いているのだろうと考えざるをえないわけです。

どう考えても「ありえない誤審」はさておき、当事者である選手同士に勝負をつけさせるために、勝負を決めるような、決定的な判定をあえて行なわないという審判の

「不作為」

は、ゲームを面白くしますから、論理的ではないけれど、納得性の高い行動と言えるかもしれません。

*参考文献

『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』
(トビアス・J・モスコウィッツ、L・ジョン・ワーサイム著、
 望月衛訳、ダイヤモンド社)

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

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