紳士服店でおしぼりを配る意図

2012.06.11

営業・マーケティング

紳士服店でおしぼりを配る意図

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 「冷たいおしぼりをどうぞ」は、飲食店ではアタリマエの風景。しかし、場所は紳士服量販店「はるやま」系の2プライススーツ店「P.S.F.A」の店頭である。(6月6日日経MJ記事より)

 ひとことで言えば、これは「アタマのいい販促」だといえる。
 「P.S.F.A」は来店客に買い物前にまず、冷たいおしぼりを提供するという。店ではおしぼり専用の冷蔵庫を店内に設置して、節電・スーパークールビズ対応する施策だという。考えてみれば来店客全てに配るということは、その分のコストが上昇する。購入してくれた客に「お礼」として提供するという手もあるはずだ。だが、あえて全ての来店客に提供する。

 おしぼりは習慣的に差し出されると受け取ってしまう。しかし、サービスを提供されると、何らか「買わなくちゃ」という負い目が心理的に生じる。「返報性の原理」という。<通常、人は他人から何らかの施しをしてもらうと、お返しをしなければならないという感情を抱くが、こうした心理をいう。この「返報性の原理」を利用し、小さな貸しで大きな見返りを得る商業上の手法が広く利用されている。至近な例では、試食がある。(Wikipediaより)>つまり、顧客心理を巧みに掴んだ施策なのである。
 さらに、店側としては、汗まみれで商品を試着されてしまうという問題を解決できる。おしぼり一本で二重にオイシイサービスなのである。実にアタマのいいサービスなのだ。

 このサービスから学べるところは大きいといえる。そもそも、サービスを始めようとしたきっかけは「返報性の原理」を狙ったのではないだろう。展開しているのは東京5店舗、関西7店舗。いずれも繁華街の1階に出店している路面店でのこと。つまり、暑い街中からいきなり店内に飛び込んでくる来店客に「駆けつけ1本」のおしぼりサービスを開始したのである。顧客の姿をよく見て、どんなニーズがあるかを見極めるところが原点であったはずだ。恐らくこの施策も「売上増」だったり、「顧客の固定化・ファン化」という効果が後から付いてくるはずだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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