日本のパッケージ・ソフト市場を開拓したアシスト社のビジョン4

2010.05.20

開発秘話

日本のパッケージ・ソフト市場を開拓したアシスト社のビジョン4

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

コンピュータソフトといえば、自社専用に開発するもの。そんな認識が主流だった日本に、本格的なパッケージソフトを持ち込み、普及を促したのがビル・トッテン社長率いるアシスト社だ。同社成長の歩みは、日本のパッケージソフト市場成長の歩みでもある。

日本ウォッチャーだからこその指摘である。データを見ればトッテン氏のいう通り、日本の名目GDPはこの20年間ほど横ばい傾向が続き、さらに悪いことに近年は下がる一方だ。

「この先日本経済が急激によくなるとは到底考えられないでしょう。少子高齢化、石油の減耗、環境問題に製造業の空洞化。現状ときちんと向き合って将来を考えるなら、日本の経済規模はやがて今の半分ぐらいになってもおかしくはない」

とはいえ業績悪化を理由に社員を解雇したことなど一度もないのがアシスト社である。先を見据えたトッテン氏は、いま大胆な制度をアピールしている。週休4日制である。

「労働時間を6割に減らします。その代わりに給料も6割にする。当社のコスト構造は、人件費の占める割合が極めて大きい。これを踏まえて売上が半分ぐらいに落ち込んでも、会社が生き残れるよう対策を今から練っているのです」

確かに計算は合う。そして休みが増える分を、例えば家庭菜園などの農作業に当てればどうなるか。あるいは衣食住を見直し、できることは可能な限り自給するようライフスタイルを変える。

「実際に僕を真似して家庭菜園に取り組み始めた社員が数十人います。会社でミシンを買って洋裁教室も始めました。僕は本気ですよ。会社と社員が協力すれば、会社を守り、最低限の給料も保証できる。同時に社員は自由になる時間を使って、自分の健康と幸福を守ることができる。これは新しい生き方になるじゃないですか」

ワークライフバランスに関心が高まっているいま、ビル・トッテン氏がアシスト社で始めようとしている制度は、今後の日本にとって極めて有益なモデルケースとなるだろう。アシスト社が教えてくれるのは、ビジネス面でのユニークな成功事例だけではない。なまじ生まれたときからの日本育ちではない、トッテン氏だからこそ見える日本の問題点とその解消策に、今こそ我々は真摯に耳を傾けるべきだろう。

~特集インタビュー
「日本のパッケージ・ソフト市場を開拓したアシスト社のビジョン」完~

『株式会社アシスト 関連リンク』
株式会社アシスト HP:http://www.ashisuto.co.jp/
代表取締役ビル・トッテン氏コラム:http://www.ashisuto.co.jp/corporate/totten/column/


【Insight's Insight】

企業の寿命は、平均して30年といわれる。しかしアシスト社の歴史はすでに30年を大きく超え、健全かつ着実な経営を続けている。やろうと思えばできたはずの株式公開などには脇目もふらず、売上は186億円もあるのに、資本金は未だに1000万円にとどめている。
同社の経営の根底を支えているのが『論語』だろう。大学院時代にゼミで『論語』を学んだトッテン氏は「権力者、トップに立つ者は道徳面でも優れていなければならない」と自戒している。顧客第一主義に徹し、自社の規模を堅実に守り続けてきた経営手腕の背景には、論語の教えがあるはずだ。
もう一つ、大学時代にトッテン氏はオペレーションズ・リサーチを志していたという。現状のさまざまなデータを変数として将来を予測するその手法が、トッテン氏流の未来予測のベースにある。数字をベースとして論理的に構築された未来についての予測を、論語の教えによって修正しながら経営に活かす。数の論理と物事の道理をわきまえた経営、これがアシスト社成功の秘密だと思う。

◇インタビュー:竹林篤実/坂口健治 ◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:村山裕章 ◇撮影協力:ピクスタ㈱

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