誰のためのデザイン? - デザイナー調味料ビン

2009.09.04

営業・マーケティング

誰のためのデザイン? - デザイナー調味料ビン

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

‘マーク・ニューソン’ というオーストラリア出身の プロダクトデザイナーはご存知ですか? 彼が手がけた製品のうち、 私たちが一番ピンとくる身近なデザインは、 au携帯電話「Talby」 でしょう。

もちろん、一流デザイナーの感性から導かれた
デザインですから、ユーザーテストの評価が仮に
低かったとしても、修正してくれとはなかなか
言えないでしょうけど!

マークビンのデザインで、
私が個人的に特に気になったのは、見た目の

「使いにくさ」(使いにくそう・・・)

です。

末広がりのすっと伸びたボディライン。
デザインとしては美しい。

でも、調理中の濡れた手で握ると、
スルッと滑って下に抜けてしまいそうに
見えます。

実際、アンケートの結果を見ると、
全体的に良くないのですが、
特に中高年の評価が低くなっていました。

40代以上の男女で、
マークビンを「使いやすそう」と答えた人は
わずかに7.8%に止まっているんですね。

見た目の持ちやすさや、使いやすさは、
いわゆる

「アフォーダンス」

と呼ばれる理論で説明できます。

アフォーダンスとは、
簡単に説明すれば、

・ドアのノブが丸ければ、回したくなる
・レバーであれば、横にひねりたくなる
・横棒が渡してあれば、押したくなる

といったように、モノの形状によって、
私たちの特定の行為が誘発されるというものです。

ビンの形状についていえば、
一般には、マークビンとは反対の形状、
すなわち

「下すぼまり形状」

が持ちやすさを感じさせ、
利用者の評価が高くなることがわかっています。

したがって、マークビンの形状は、
アフォーダンス的にもあまり好ましくない
と言えそうです。

まあ、あまり評価のよろしくないデザインだとしても、
既存のビンが撤去され、店頭に「マークビン」しか
並んでなければ、この製品を選択するしかなく、
結果的にちゃんと売れていくわけですから、
OKなのかもしれませんが・・・!

ちなみに、アンケート対象者のうち、
マーク・ニューソン氏のことを少しでも
知っていたのは5%でした。

ですから、このビンは

「あの‘マーク・ニューソン’のデザインなんですよ」

と訴えたところで、

「ふーん、誰その人」

と軽く受け流されてしまうだけでしょう。

つまり、本来なら期待したいはずの
著名デザイナーが持つブランド効果も
あまり期待できないということですね。

マークビンのデザインを見ていたら、

“いったい誰のためのデザインなのか?”

ということを改めて考えされられました。

*参照記事
 『ブランド向上委員会第24回 味の素のパッケージ比較
  調味料のビンにデザイナー名は不用』
 (日経デザイン、September 2009)

*関連記事『下すぼまり形状』
http://www.mindreading.jp/blog/archives/200607/2006-07-25T1200.html

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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