富野由悠季氏、アニメを語る(2)ガンダムは作品ではなく"コンセプト"

2009.07.23

経営・マネジメント

富野由悠季氏、アニメを語る(2)ガンダムは作品ではなく"コンセプト"

ITmedia ビジネスオンライン
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『機動戦士ガンダム』の監督として知られる富野由悠季氏が7月7日、東京・有楽町の日本外国特派員協会に登場、自らの半生や映画哲学などについての講演と質疑応答を行った。後半では質疑応答の内容を詳しくお伝えする。[堀内彰宏,Business Media 誠]

――ガンダムから始まり、『新世紀エヴァンゲリオン』や『マクロス』でもそうだと思うのですが、主人公が10代の男の子で、戦争に巻き込まれて、ある日突然ロボットか何かのなかに入って、ちょっと考えるだけで操作できるようになる。こういうヒーロー像が出てくる文化的背景はどこにあるのでしょうか?

富野 おもちゃ屋さんがスポンサーだからです(笑)。

 でも、この言い方は半分は絶対的に正しいです。この絶対条件をのむためにどうするかと考えたわけです。「全長が18~20メートルの人型兵器が運用できる物語世界がどこにあるんだろうか」と考えた時に、重力下では絶対に動かないと想定されたので、宇宙戦争にすると決めました。

 また、毎週新しい兵器、つまりモビルスーツが出てこなければいけない。毎週新型のモビルスーツが出てくるだけの経済力があるのは国家レベルでしかないということで宇宙戦争にしました。「地球と月までのスペースの中で国家を成立させることができるか」と考えた時、スペースコロニー(※)というアイデアがあったおかげで国家を形成することができました。

(※)スペースコロニー……宇宙空間に作られた人工の居住地のこと。

 そして、「戦車や航空機レベルのものを、子どもがなぜ見た瞬間に操縦できるか」ということについては、“超能力者”であるという設定をしました。ただ、30年前でも超能力者という概念はSFの世界ではすでに使い古されていた概念でした。そこで、ファーストガンダム(『機動戦士ガンダム』)の主人公アムロに関しては“ニュータイプ”ではないかという設定にしました。

 このニュータイプという定義付けがとても難しくて当時はできませんでしたが、最近ようやくできるようになりました。

 我々は今環境問題、エネルギーが少ない地球というものに直面しています。現在までの人類の能力論や経済論だけでは、1000年という時間を我々は地球で暮らせないわけです。

 そういう問題が具体的に分かってきた時に、日本人でも「人類が生きのびるためには、ニュータイプにならなければならないのではないか」という考え方を持つ人が出るようになってきました。30年前の「アムロはニュータイプかもしれない」といった概念が、ようやくここで定位しつつあります。「我々は現在以上の能力を持てる可能性にチャレンジしなければいけない」「チャレンジする意味もあるのではないか」、つまり(ニュータイプは)全部がフィクションではないというところに到着することができました。

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