もしかして自分って鬱?

2008.06.27

組織・人材

もしかして自分って鬱?

斎藤 日登美

「もしかして自分って鬱?」 あなたはそんなふうに考えたことはないだろうか・・・。最近では心の風邪とも呼ばれ、すっかり市民権を得たように見える、この、「鬱(うつ)」。鬱病で外来診療を受けた人の数は、昭和59年には6,000人。それが平成14年には、41万2,000人と、人口の増加を加味しても追いつかないほど、うなぎのぼり、なんと70倍に増加しているのであるから驚きだ。

NHKの「クローズアップ現代」でも言っていたが、鬱病患者はとうとう100万人を超えたという。しかし鬱かも、と感じた人のほんの一部だけが外来診察を訪れるため、実際には潜在的鬱を入れると莫大な人数になるであろうことは想像に難くない。
しかしあなたは、鬱のことをどのくらい正確にご存知だろうか。非常に一般的な以下の質問に答えてみて欲しい。

1.鬱、抑うつ状態、鬱病、バーンアウトの違いは何か?
2.鬱病の生涯有病率(一生の間にこの病気にかかる確率)は何%くらいか?
3.一般に鬱病を最も発症しやすいのはどのくらいの年齢層か?
4.鬱かもと思ったらどうしたらいいか?投薬を受けるリスクとは何か?

私は主に目標達成の支援を行うエグゼクティブコーチングを行っているが、同時にカウンセラー・セラピストとして、心の健康(メンタルヘルス)まで含めて扱っている為、日々「もしかしたら自分は鬱なのではないか」「バーンアウトなのではないかとまわりに言われてきた」そんな経営者をはじめとするビジネスマンが連絡をしてくるケースが結構多い。先日も、以前セミナーで名刺交換させていただいた、ある教育系企業のNo.2の取締役の方から急に連絡があり、「どうしても今日時間を取ってくれないだろうか」と言われた。ただならぬ気配を感じて、なんとか時間をやりくりしてお会いしたところ、彼が「自分はバーンアウトしつつあるかもしれない。判断してくれないか」と言う。聞けば現在勤める企業でいよいよ次期社長と目されるようになり、天才肌の社長から引き継ぐプレッシャーや個性の違い、近々予定されている大イベントなど、いくつかのストレス要素が彼を追い込み、呆けたようにやる気を失っているのだという。「集中力が全然ないみたいで、事務の女性にも指摘されました。こんな自分ははじめてですね・・・」とデキる男の顔のまま言い放つ彼はかろうじて冷静さを保ちながらも、深い苦悩に満ちて見えた。実際には私は医者ではないので、バーンアウトかどうかを「診断」する立場にはないが、お話をお伺いすれば外来診療と投薬治療をお勧めすべきか否かは判断がつくし、紹介先も持っている。結局私はその時1回限りだが、彼のお話をじっくりお伺いして、混沌としたお心を少し、整理するお手伝いをしてさしあげた。途中、「ねぇ、これが何?コーチングってやつ?カウンセリングってやつなのですか?凄いね、凄いんだね」饒舌になり、そして気分が軽くなっていく自分を自覚されたのだろう。途中何度も照れ隠しもあるのか、彼がそう驚きを表現されていた。「カウンセリングとコーチングは違うんですよ」そんな野暮なことは私も言わなかったが・・・。「憑き物が落ちたようにすっきりしました」と彼から後日連絡があり、今はすっかり自分を取り戻しているという。謝礼の言葉と共に、「相談させていただいた時は、なんともいえないブルーで、不思議な感覚でしたね。お騒がせしました」そう彼は結んでいた。こんなケースもある。
鬱やバーンアウトのことは、わかっているようで、意外と皆知らないのかもしれないな、とそう思ったので今日は筆を取った。鬱状態やバーンアウトしかかっているときには、自身の異常性には気づくものの、客観性を失っているので、「自分は休めない」「どうせ誰にも分かってもらえない」などと思ったりして余計抱え込んでしまう。私にも同様の経験があるからそう言える。私は企業戦士時代の経験に悔いはないが、たった1つの悔いをあげるとすれば、その自分の無知と愚かさであろうか。今、心の健康に一抹の不安をお持ちの誰かがもしいたら、私がたどったような回り道をしないで欲しいと願ってならない。

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