さよならアイワ。

2008.05.20

経営・マネジメント

さよならアイワ。

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

先週のニュースであるが、「アイワ」ブランドがついに幕を下ろした。筆者は学生時代には同社製品であるヘッドホンステレオの「カセットボーイ」を随分長く、何世代か愛用していた。経済アナリストではないのだが、その思い出深いブランドがなぜ、消えてしまうことになったのか、一考してサヨナラの言葉に代えてみたいと思う。

かつて、アイワはチャレンジャーであり、少なくとも市場や製品の領域によってはニッチャーとしての力があったはずだ。しかし、後期はどう見てもフォロアーであった。

最後の挑戦としては、デジタルオーディーの初期の展開だっただろうか。MP3規格のオーディオプレイヤーが出始めた頃、ソニーはメモリースティックにこだわって、ユーザーにとってはどうにも使い勝手が悪かった。そこでアイワはUSBメモリに注目し、2004年にUSBメモリ音楽プレイヤーを投入したのだ。
今、見直してみると悪くないものばかりなのだが、当時注目されていた記憶があまりない。恐らく、マーケティング活動、特にプロモーションやチャネル政策に十分な資金や人的資源が投下しきれなかったのではないだろうか。
また、もう少し考えてみれば、インターフェースをUSBにするということは、親会社であるソニーとの差別化はできるものの、模倣困難性があるかといえば、全くそんなことはないだろう。

アイワは創業期から成長期には、技術や発想力という、独自性の「牙」があったのだ。しかし、得意領域がコモデティー化したころから、いつしか「牙」を失い、「フォロアー」のポジションになってしまったのではないだろうか。
独自性を発揮し続けることは容易ではない。しかし、今日の競合が激しい経済環境において、「フォロアー」が生き残ることは難しい。かつての愛用ブランド消滅は寂しい限りだが、これは特別な例ではないのだろう。今後も牙を研ぎ続けることができなくなったブランドはどんどん消えて行くに違いない。
これから先、いくつの馴染みのブランドを「サヨナラ」と見送ることになるのか分からないが、本当に厳しい時代になったと思う。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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