オンライン・コミュニティの効果検証

2007.03.26

営業・マーケティング

オンライン・コミュニティの効果検証

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

オンライン・コミュニティは、既存顧客との関係性強化に 効果が高い。結果として、リピートアクセス数の向上や 取引金額の増加につながる。 理屈では、この考え方(仮説)は限りなく正しいはずです。 でも、なかなか数値的に実証されたことはありません。

私自身も、オンライン・コミュニティの構築を提案する際に、

「実際、どの程度効果あるの?」

というクライアントからの質問に対して、
説得力のある事例をなかなか提示することができませんでした。

しかし、世界最大のネットオークション「イーベイ」で、
05年5月から1年間にわたって行われたフィールド実験の結果は
結構使えそうですよ。(PRESIDENT、2007.04.16)

イーベイは、日本からはさっさと撤退してしまいましたので、
その仕組みを理解されている方はあまり多くないと思いますが、
オークションだけでなく、会員掲示板やクラブ、チャットルーム
など、コミュニティ機能が充実しています。

ハーバード大学の研究者は、イーベイ・ドイツの協力を得て、
フィールド実験を行い、オンラインコミュニティの効果を
検証することにしました。

調査対象者は、3ヶ月以内にイーベイのオークションサイトで
品物を販売、または購入したことのあるユーザー約14万人。

ただし、彼らは、これまでコミュニティに参加したことの
なかった人たちです。

実験では、この14万の中から無作為抽出された約8万人の人に、
コミュニティへの参加を促すeメールを送信。

残り6万人はいわゆる「コントロールグループ」です。
eメールを送ったグループと比較できるよう、
イーベイからは何もアクションしません。

実験開始後3ヶ月。
eメール送信者8万人のうち、約1万4千人がコミュニティに
参加しました。

そして、この1万4千人の新規コミュニティ参加者を

・能動的参加者(掲示板に書き込んだり、議論に参加)
・受動的参加者(読むだけ、つまりROM)

に分けると、

・能動的参加者:約3千人
・受動的参加者:約1万1千人

となりました。

さて、それから1年間、このコミュニティ参加者と、
コントロールグループの6万人の行動を追跡、比較した
ところ、次のような結果が得られています。

◎能動的、受動的参加者の行動(入札面)

・入札回数: コントロールグループの2倍多い
・落札回数: 同25%高い
・落札金額: 同14%高い
・合計金額: 同54%高い

◎能動的参加者の行動(出品面)

・出品点数: コントロールグループの4倍多い
・月次売上: 同6倍

◎初めて出品した人の割合

・能動的参加者の場合:54.1%
・受動的参加者の場合:56.1%

*この数字は、コントロールグループの10倍近く。
 (つまり、コミュニティに参加していない人が、
  出品する割合は10%にも満たないということでしょう)

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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