ブレークスルーのためには「理論」に立ち戻れ!

2008.03.19

IT・WEB

ブレークスルーのためには「理論」に立ち戻れ!

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

今回は、新しい何かを開発したり、 創造することに行き詰まったら、 「理論」 に立ち戻ってみると、 「突破口」 が見つかることがあるという話です。

先月(2月)に、山口栄一氏(同志社大学教授)の
著作や講演を元に、イノベーションに関連した記事を
何本か書きました。

その中のひとつ(「研究」と「開発」の違い)では、
タイトルの通り、

「研究」と「開発」

の違いについて解説したのですが、
覚えてらっしゃいますか?

「研究」と「開発」は、
それぞれ次のように言い換えることができます。

研究・・・「知の創造」
開発・・・「知の具現化」

研究、すなわち「知の創造」とは、

・誰も知らないこと
・誰も見たことがないこと

を発見することです。

そして、知の創造のための私たちの取り組み(行動)が

「科学」(科学する)

であり、「科学」によって発見されたことを

「科学的知見」

と呼びます。

一方、こうした科学的知見を集積・統合して、
なんらかの目的に寄与する「製品」を作ることが、
開発、すなわち「知の具現化」です。

そして、知の具現化のための私たちの取り組み(行動)を

「技術」

と呼びます。

実は、この記事について、
ある技術者の方からコメントをもらいました。

その方によれば、
実際の製品開発を進める際に壁にぶち当たったら、
理論的な研究に立ち戻って

「知の創造」

に取り組み、新たな「科学的知見」を得て、
その壁を乗り越えようとすることが多いのだそうです。

なるほど。

ただ、新たな開発のためには、
常に新たな科学的知見が必要とは限りません。

実は、過去に発表された論文の中に眠っている

「既存の知見」

が役に立つことも多いのです。

最新の具体例を示しましょう。

美しい機体を持つ超音速旅客機、

「コンコルド」

は、音速を超えるスピードで飛ぶ際に発生する衝撃波、

「ソニックブーム」

がもたらす問題を解決できなかったため、
結局、2003年に運航を終了することになりました。

ソニックブームがもたらす問題とは、大きくは

・大きな騒音(このため居住地区では超音速飛行ができない)
・大きな空気抵抗(このため燃費が悪い)

の2つでした。

しかし、近年、コンコルドに代わる

「新世代の超音速飛行機」

の研究・開発が進められています。

この飛行機は、上下2枚の翼を持つ複葉機です。

ライト兄弟が世界で最初に飛行に成功した

「ライトフライヤー号」

は複葉機でしたね。

あるいは、宮崎駿監督作品、

『紅の豚』

に登場した戦闘機が複葉機でした。

古臭いイメージのある複葉機と
超音速機の組み合わせはあまりピンときませんよね。

実は、上下2枚の翼があると、
お互いに干渉しあうために衝撃波を発生しないこと、
したがって、

次のページ「複葉超音速機」

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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