株式の売却益は当期利益ではない?:IFRS第9号金融商品

2009.12.07

経営・マネジメント

株式の売却益は当期利益ではない?:IFRS第9号金融商品

野口 由美子

2009年11月に公表されたIFRS第9号金融商品では、株式などの金融資産の評価方法が大きく変わります。一部の株式について売却損益を当期損益に計上できなくなりました。

本サイトへの投稿記事は
aegifの国際会計基準専門ブログ IFRS of the day(http://aegif.typepad.jp/ifrs/)より引用しております。

国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第9号では、金融資産の分類と測定について新しいルールを定めています。

前回の記事で紹介しましたが、
有価証券やデリバティブなどの金融資産は、
償却原価で測定するものと公正価値で測定するものの2つに
分類して評価を行います。

この分類方法に従うと
株式はすべて公正価値で測定するものに分類されることになるので、
毎期末に株式を時価評価してその変動額は当期の損益となります。

ここで、日本で問題になったのが
いわゆる持ち合い株式です。
現在の日本基準で持ち合い株式は
「その他有価証券」という分類を用いて時価の変動額を
損益に計上せず純資産に直接計上する方法がとられています。

持ち合い株式の時価の変動を当期の損益に影響を与えることがなかったのですが、
今回のIFRS第9号が日本で適用されれば、
持ち合い株式で毎期の損益が大きく変動してしまうことになります。
日本にとっては受け入れられないものでした。
日本では経営者の意思決定とは関係なく損益が変動することに抵抗があるのだと思います。

そこで「日本版改訂」ということで、
企業が指定した株式に限って
時価の変動を当期利益ではなく「その他包括利益」に計上するという選択肢が追加されました。

企業はこの選択を自由に行なうことができます。
しかし、一度指定してしまうとやめることはできません。
またその株式の配当は当期の利益となりますが、
売却してもその損益を当期損益に計上することはできません。
売却損益も「その他包括利益」に計上します。

その他包括利益に計上していたものを
あるタイミングで純利益に計上することをリサイクリングといいます。
現行の日本基準での考え方では持ち合い株式も
経営者の意思決定により売却すればそこでその株式に対する投資の成果が確定し、確定した損益として当期利益に反映することになります。

IASBの審議を見ていると
そもそもこのような発想をする国がないようです。
損益というものはすべていつかは確定したものとして当期利益に反映されるべき、ということではなく、
当期損益も含めた包括利益という大枠を中心に捉えているということになると思います。
この日本版改訂を重要視しているのは日本だけのようです。

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