「向上心」という誤解

2009.06.10

組織・人材

「向上心」という誤解

樋口 弘和

今回は「向上心」や「モチベーション」と一般的に呼応される能力(資質)を新卒採用面接で評価する際の大きな問題についてお話していきます。

ほとんどの採用面接官は「向上心」や「モチベーション」を、
要は「やる気があるかどうか」で理解しようとします。

つまり、面接官がやる気を感じるかどうかは学生の「態度」や「発言」で
決まるわけです。

ですので一般的には、

①元気で声が大きく
②姿勢が良くさわやかで
③ユニーク

かつ、大きな経験をしていると、いとも簡単に「よし!彼はやる気がある!」
と断言してしまいます。

でもこれは間違いだらけ、と言わざるを得ません。

日本人として普段慎ましく自己主張の上手でない普通の学生が、志望度の高い
企業の面接では、その意欲の高さを「態度とプレゼン力」で3倍程度に見せる
ことができる―

これが、「面接で向上心があるように見えてしまう」原因のひとつである
といえるでしょう。

つまり、これは善意の演出の世界なのです。

実際の職場で面接官が部下のやる気を評価するときは、“実績”なのに、
どうして採用面接では“自己PRや声の大きさや態度”しか見ない
のでしょうか。

これは、きっと新卒採用面接とはそういうものだ、という思い込みがあるに
違いありません。

「所詮1時間ほどの面接を重ねても、最後は働かせてみなければわからないよ」
―これはこれで真実だと思いますが、一方で、社内の評価システムとそこで
評価される人材を調達する採用における評価システムが全く違う、という
ことに誰も疑問を持たないことは大きな問題といえます。

もちろん彼らは部下と違って、被面接者の普段の姿を知らないので、
実績を正しく評価することは難しいかもしれません。

しかし一方で、しっかりとした面接スキルを身につけた優秀なマネージャー
であれば、本人の口からこれを聞き出し、評価することは可能です。

さて最後に、「向上心」について触れておきましょう。
表現はモチベーションでも、率先行動、自主性でもいいのですが、この能力
(コンピテンシー)の高い人に共通するのは、「いつも自分に不満があり、
自分より圧倒的にレベルの高い人と働くことを喜ぶ」ことです。

つまり、いつもコンプレックスを持っていることが当たり前なのです。

ですから、 いつも自分の実力や成果を自らも、上司からも欲しがり、
それがモチベーションになっている人や劣等感を感じるような集団に自ら
入ろうとはしない人 というのは向上心の高い人とは決していえません。

こうした行動事実を“これまでの生き方”の中から抽出し、評価できるかどうか。

その観点からは、新卒採用面接は大変高度な見抜き力が要求される
といえるでしょう。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。