「仕事が楽しい」の“楽しい”とは何か? ~「快」と「泰」のキャリア考

画像: Career Portrait Consulting

2021.12.15

組織・人材

「仕事が楽しい」の“楽しい”とは何か? ~「快」と「泰」のキャリア考

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ひとくちに「仕事が楽しい」と言っても、それが「情」寄りで楽しいのか、「意」寄りで楽しいのか性質の違いがあります。生産年齢者として50年、人間として100年生きるとき、この「情」ベースから「意」ベースへ、「快」の追求から「泰」の志向へのマインド・シフトともいうべき意識転換が重要ではないでしょうか。

また、私たちは生きていくうえでいろいろ競争をしなくてはいけませんが、他者との比較競争で勝つ喜びや優越できる上機嫌のようなものがあります。これらは「情の楽しい」といえるでしょう。その一方、他者との競争・勝ち負けではなく、自分に克って、何かを成し遂げていく喜びは「意の楽しい」に属するものです。

ここでは、どちらの「楽しい」がよいか、わるいかを問うているのではありません。どちらも必要なものですし、私たちはこの2つの間を行ったり来たりします。見つめてみたいのは、どちらの活動・どちらの「楽しい」が自分の人生のベースになっているか、です。

[講義スライド4]

「情的な楽しい」を求めることがベースになっている人は、刺激的な喜びを好む傾向が強い人です。ある刺激のもとではウキウキ、ワクワクとなりますが、別の刺激を受けると今度は意気消沈してしまうといった気持ち変動の大きい生活になります。このことは承認欲求の強さや、他者との比較や競争への関心の強さとも関係しています。

さらに言えばこうした傾向性は、成功者をひたすら目指す「成功のキャリア」や、逆に成功者路線をあきらめ、小さな「快」の殻に閉じこもる「自己防衛のキャリア」につながってきます。

他方、「意的な楽しい」を求めることがベースになっている人は、建設的な喜びを好む傾向が強い人です。自分のやり遂げたい意味・貢献に意識が向いていて、他者との比較や競争をあまり気にしません。自分に克つか、妥協するかを問います。

こうした傾向性は、みずからの存在を十全に開いていくことを喜びとする「健やかさのキャリア」につながってきます。

このように、ひとくちに「仕事が楽しい」と言っても、それが「情」寄りで楽しいのか、「意」寄りで楽しいのか性質の違いがあります。

歳を重ねるとともに「仕事の楽しさ」の質が変わってくる

私個人の話をしますと、20代から30代前半は、仕事をスポーツのようにとらえていました。そのため販売個数や市場シェアなどの数値を追いかけ、目標をクリアすることを面白がっていました。競合他社に勝てば喜び、負ければ悔しがる。いい成績をあげて社内で評価が高まればうれしい、評価が下がれば落ち込む。そういった上がり下がりの波が、自分の仕事意欲の刺激剤でもありました。振り返れば、「情的な楽しい」がベースの日々だったように思います。

ところが30代半ば過ぎからはそうしたスポーツ的な激しい仕事の繰り返しに飽きがきたり、疑問がわいたりして、趣味生活を重視する時期がきます。仕事はほどほどに抑え、趣味の充実に走ります。趣味からもいろいろな楽しみや刺激を得ましたが、やはり消費や所有からくる喜びは「情」寄りのものです。長続きしませんし、肚ごたえが足りません。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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