発電する配管 - パナソニック

2011.07.21

経営・マネジメント

発電する配管 - パナソニック

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

東日本大震災以降のエネルギー行政の迷走によって俄かに降って湧いた日本全国における電力供給不安、これからは節電のみならず発電への関心も高まるだろう。 発電といえば、太陽光、風力発電が注目されているが、今回はちょっと変わり種、パナソニックが開発した発電する配管を紹介する。

パナソニックは、同社曰く、世界初となる熱発電チューブを開発した。これに用いた原理を利用することで、お湯を流す配管での発電が可能となり、試作した長さ10cmのチューブで1.3Wの電力を取り出すことに成功したという。

このチューブの発電原理は熱エネルギーを電力に直接変換する熱電変換と呼ばれる発電技術で、材料の両端に温度差を生じさせ、熱エネルギーを電力に変える。温度変化をもとに発電する現象は、発見者の名前をとってゼーベック効果と呼ばれる。この技術による発電方法は、タービンのような可動部がなく、二酸化炭素等の排出もないため、クリーンエネルギーの一つとして期待されている。

これまでも温泉熱を利用した熱発電の取り組みはあったが、それらは配管の外側に熱電変換素子を貼り付けて配線しているため、熱を取り込む際のロスが大きく、信頼性にも課題があった。

パナソニックは、熱発電素子の構造を工夫し、熱の流れにくい熱電変換材料と熱の流れやすい金属とを傾斜して交互に積層し管状にした単純な構造で発電させる原理を考案した。これにより配管そのものに発電させることができるようになった。(同社の当件のプレスリリースの下部に、この原理の説明図がある⇒ http://bit.ly/liXVfv )

今回の開発により、製法が簡単かつお湯を流す配管などにそのまま使えるチューブそのものでの熱発電が可能となった。これにより、複雑な配線が不要となり、熱の取り込みロスも減り、同社の実験では、従来の方法に比べて4倍の発電量を達成したという。

太陽光や風力などと比較して天候などに左右されず、急激な出力変動がない安定した再生可能エネルギーとして地熱・温泉熱の活用が期待されているが、温泉との競合もあってあまり開発が進んでいない。同社は、この開発したチューブが泉源からのお湯をわき水などで冷まして適温にする所などで用いられれば、発電と温泉を両立できるようになり、新しい熱発電システムにつながると見ている。

この新しい技術が制約を取り払い、今まで活用されなかった熱源の発電利用に道を開くことを期待したい。

中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長

調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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