覚せい剤中毒からどのようにして更正できたのか?(5)

2009.11.24

ライフ・ソーシャル

覚せい剤中毒からどのようにして更正できたのか?(5)

ITmedia ビジネスオンライン
“ニュースを考える、ビジネスモデルを知る” ITmedia 編集部

岐阜県内の暴走族総長に“就任”した杉山裕太郎さん。しかし自己肯定感を持てず、覚せい剤中毒に陥ってしまった。覚せい剤中毒の日々を送る中、杉山さんはどのようにして更正することができたのだろうか? [嶋田淑之,Business Media 誠]

杉山さんの活動の成功要因は何か?


 

杉山さんのライブや講演が、多くの人々に受け入れられた要因には、メッセージを伝える手法が単なる講演ではなく、オリジナルソングのライブと一体化しているという独自性があろう。さらに彼ならではの、明快極まりない論旨にあると筆者は思う。

 親や友人など親しい人々、さらには社会にとって自分がかけがえのない存在だと実感できてこそ、人は夢や希望を持てるし、それがあって初めて人生のどんな困難をも乗り越えていく勇気や忍耐力を持つことができる。

 しかし、自分が誰からも愛されず、社会からも疎外されていると実感してしまうと、もはや、そこには夢も希望もなく、結果、人生の荒波を乗り越えていくだけの勇気や忍耐力をもつこともできなくなってしまう。そうなると、あとはただただ流され、現実を逃避し、あるいは破滅的な衝動に駆られるようになっていくのみであろう。

 そんなことは自明であるはずなのに、現代の日本人、とりわけ親たちは、自分の子どもたちに対して、かけがえのない大切な存在だという愛情を持っているだろうか? 仮に持っていたとして、それを、子どもに分かるような形で、ちゃんと伝えているだろうか?

 現実には伝えていないケースが多いし、それどころか、愛情すら希薄な場合が多いのではないだろうか? イジメ、自殺、覚せい剤、無差別殺人などの根っこは、基本的に、そこにあるんだ。だから、こうした問題を解決したいのなら、まずは、ここを押さえないといけないんだ。

 杉山さんは、そう主張しているのである。まさに家庭教育や学校教育の原点を突いているのだ。

ネット社会の現代だからこそ増すその説得力


 インターネットの普及と発展は、現代人の仕事に対してもプライベートに対しても、大いなる利便性をもたらした。しかし「メラビアンの法則」が教える通り、言語データで相手に伝え得るメッセージは、全体の7%に過ぎない。

 表情や、体の動き、声の調子、姿勢など、非言語的コミュニケーションによってこそ、自分の言語メッセージは、その伝えたい内容を的確に相手に伝達することが可能になる。

 それにもかかわらず、そうした初歩的な真実はいつしか忘れ去られ、ネットさえ使えばコミュニケーションは完結できると信じて疑わない大人や子どもが、いまや大半を占める世の中になってしまっている。愛情が仮にあったとしても、それを的確に表すことのできない人々がちまたにあふれ、その結果として、自分は愛されていない、世の中に不必要な存在だという疎外感を強める人々が急速にその数を増やしている。

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