/根本にあるのは、生存意志、つまり自己本位の欲で、事実の認識なんて、それに合うように捏ち上げられているだけ。どんな物語(世界)を出してきたところで、どれが「正しい」かは、力づくで強引に決めつけられるだけ。結局、だれかが納得せず、永遠に物語の闘争が続くだけ。しかし、物質的自然そのものも生存意志を持っており、暴力的かつ無目的に歴史を紡ぎ出していく。/
今日、それぞれが勝手な物語を捏ち上げ、声の大きさで、それどころか、暴力づくで、世界の人々にも押しつけ、それを無理やり公式のものとし、物理的にも現実化しようとする話が溢れかえっている。彼らは、たがいに狂乱の体で、相手を陰謀論だ、差別論だ、と激烈に罵るが、じつのところ、どれも似たようなもの。その異様なゼーローテースたちの面倒に巻き込まれまいと、みな口をつぐみ、連中が相い争って自滅するまでやり過ごそうとする。おそらくショーペンハウアーの時代、無前提の伝統が破壊されたフランス革命後の混乱の世相も、そんなだったのだろう。連中とは話にならないが、連中がどう言おうと、物質的で絶対的な自然世界は、それ自体の生存意志によって、なるようになる。そのとき、自分はどうすべきか。騒々しい連中のプロパガンダ合戦から身を引き、ショーペンハウアーでも読んで、冷静に考えてみてはどうか。
哲学
2023.05.28
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2024.05.29
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。