技術イノベーションの4類型

2008.02.15

仕事術

技術イノベーションの4類型

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

イノベーションには、大きく分けると、 次の3つの軸があることを前回ご紹介しました。 ・技術イノベーション ・経営イノベーション ・アイステシス・イノベーション このうち、技術イノベーションにおける 4類型についてご紹介します。

技術イノベーションは、
次の2つの軸の組み合わせの枠組み
で考えると構造が把握しやすくなります。

・性能持続型-性能破壊型
・パラダイム持続型-パラダイム破壊型

では、まず

[性能持続型-性能破壊型]

の軸から説明します。

性能持続型は、
性能をより高めていく取り組みです。
これは、技術イノベーションの自然な方向性ですね。

一方、性能破壊型は、
逆に意図的に性能を引き下げることによって、
別のベネフィットを高めるアプローチです。

たとえば、ハードディスクドライブ(HDD)は、

「14インチ」

の大きさからその製品の歴史が始まっています。

しばらくして、より小型の

「8インチ・ドライブ」

が開発されましたが、小さい分記憶容量が少ない。

つまり、14インチよりも性能は低下しているわけです。

このため、当時14インチHDDを製造していたメーカーは
バカにしてどこも手を出さなかったのです。

ただし、8インチHDDは、
「小さい」というベネフィットを高めることが
できていますよね。(もちろん、8インチという規格の中で、
記憶容量を高める技術革新は続けられましたが)

その後も、

5.25インチ、3.5インチ

とさらに小型のHDDが開発され、
それぞれ、デスクトップ、ノートパソコンなど、
容量よりもサイズが小さいことが重要なコンピュータ向けに
普及が進んできました。

『イノベーションのジレンマ』で、
クレイトン・クリステンセン氏が検証しているように、
大きなサイズのハードディスクでトップシェアを取っていた
企業が、こうしたハードディスクの小型化の流れ、すなわち、

「性能破壊型イノベーション」

についていけずに、ほとんどが姿を消していきました。

一方、もうひとつの軸である

[パラダイム持続型-パラダイム破壊型]

ですが、これは、

その技術のよりどころとなる「科学原理」が同じか、異なるか

ということで分かれます。

例えば、「真空管」の性能を圧倒的に凌駕した

「トランジスタ」

の開発は、

「パラダイム破壊型イノベーション」

と呼べるものです。

なぜなら、真空管の動作の元になっている科学原理は

「古典電磁気学」

であるのに対し、トランジスタのそれは、

「量子力学」

だからです。

ですから逆に言えば、
古典電磁気学ベースでの

「真空管」

という規格上の技術革新は、

「パラダイム持続型イノベーション」

であるということがおわかりですよね。

さて、この技術イノベーションの2つの軸、

・性能持続型-性能破壊型
・パラダイム持続型-パラダイム破壊型

次のページ1.パラダイム破壊型-性能破壊型

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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