恋せよオヤジ?:BEAMSポスターのナゾ

2011.09.03

営業・マーケティング

恋せよオヤジ?:BEAMSポスターのナゾ

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 8月31日。誰しも知るオヤジの街・新橋。その最深部ともいうべき烏森の入り口であるJRの駅通路にオシャレな駅貼りポスターが出現した。広告主はセレクトショップのBEAMS。キャッチコピーは「恋をしましょう」だ。ナゼ、新橋にポスターを貼ったのか?

 「恋をしましょう」は、BEAMSが全ブランドを横断して展開するキャンペーンである。「KOIWEB」という専用サイトを作って、女優・蒼井優が歌って踊る「恋をしましょう体操」の動画を公開している。素朴な少女の姿を描いた写真集「未来ちゃん」で人々の心をとらえた写真家・川島小鳥が8組のカップルの姿を写し撮ったアルバムも公開されている。FacebookとTwitterに連動したと連動したアプリ、「恋センサー」をアップされている。盛りだくさんで贅沢なサイトだ。

 そのキャンペーンメッセージとWEBサイトを告知するポスターが各駅に掲出されている。その1つが新橋の烏森口改札を出て右側の壁面に登場した。

 ローカルな話題なので少々説明をしよう。ほろ酔いのお父さんたちがテレビのインタビューを受けることで有名な「SL広場」とは山手線・京浜東北線ホームの前後反対側に位置する。改札を出て左に進めば日テレなどもある汐留・シオサイトに行き着く。オシャレなポスターは、シオサイトに向かう人の注目を集めようとしているのかといえば、そうではない気がする。確かに改札で待ち合わせをしている人の目には多少入るが、メインの導線上ではない。右に出れば、細々とした飲み屋がひしめくディープなゾーンへと続く。そんな場所にBEAMSのポスターが掲出されたのだ。しかも「恋をしましょう」である。

 屋外広告として通行量は文句の付けようのない優良物件だ。反対側の壁面にはパナソニックの電動シェーバーが長く陣取っている。確かにひげ剃りは新橋に似合う気がする。商品のキャラクターがKAT-TUNの亀梨和也だと前を通るオジサンが認識するかは怪しいが、商品には注目するだろう。では、BEAMSのポスターは誰に訴えかけているのだろうか。

 「恋をしましょう」は同社の35周年記念でもある。1976年創業。1980年代に雑誌・ポパイとコラボレーションをして若い男性の間にBEAMSブームを巻き起こした。当時ポパイでファッションから恋愛までを学んだ20代の若者も現在では40代半ばから50代だ。BEAMSの凄いところは当時からのファンを顧客として囲い込みながら、新たな若い顧客を取り込んで成長し続けたことだ。その意味では、ポスターは新橋を拠点とするビジネスパーソン(レディースも展開しているので、当然女性も含む)に訴求しているのだと考えるのが自然だ。だが、それならばわざわざオヤジ比率の高い新橋烏森口にポスターを貼る必要があるのだろうか。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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