「女子向けスマホ」は「女子」を狙っているのか?

2011.09.02

営業・マーケティング

「女子向けスマホ」は「女子」を狙っているのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ケータイ擬人化キャラの堀北真希が「女子のためのドコモ・スマートフォン」とはっきりとCMで言い切っているソニー・エリクソンのXperia ray。そのターゲットは本当に女子だけなのだろうか。

 「コミュニケーション・ターゲット」と「ビジネス・ターゲット」という。ヌーブラの場合、「オシャレでもっとキレイになりたい若い女性に!」と訴求する。すると、当然それに該当するターゲットも購買に動くが、それを見てより大きなカタマリとしてのターゲット層が動くことを期待して戦略を立てる。ターゲット設定には「優先順位(Rank)」と「波及効果(Ripple Effect)」という観点が欠かせないのである。

 「女子向けスマートフォンXperia ray」。ターゲットは本当に女子だけなのだろうか。
 スマートフォンはいわゆる「キャズム(溝)」を超えて、広く一般に普及する段階に入ったといわれるようになった。日本独自仕様である従来の携帯電話を「ガラケー(ガラパゴス携帯)」などと呼ぶが、その機能を取り込んでユーザーの裾野を広げようとするスマートフォン、「ガラスマ(ガラパゴススマートフォン)」の機種も充実してきた。その段階で移行するのはどんな層なのか。
 確かに、「大きすぎる」「重い」という購買棄却理由で従来のケータイを使い続けていた若年女性層は狙えるだろう。だが、熟年女性層も大きく動くことが考えられるのだ。もっと明確にいうなら、「1・2・3」という短縮ボタンの付いた「らくらくホン」からの買い換えである。
 携帯電話の使用状況を見ると、残念ながら熟年男性は最低限の機能を使用するに留まっている。それに対し、熟年女性はアクティブに利用している。そのニーズを受け、「これって、もはやらくらくホンじゃないのでは?」というまでに進化している。次に来るのは、スマートフォンだ。
 そうした熟年アクティブユーザーは「1・2・3」というボタン付きである「高齢者向け」という機種のイメージに不満を持っている。故に、「らくらくスマートフォン」を作ってはいけないのだ。

 Xperia ray。それは、本格的な普及期に入ったスマートフォン市場で、イノベーション論でいうところの「アーリーマジョリティー(前期大量採用者)」を取り込むことである。CMにあるように、「コミュニケーション・ターゲット」として若い女性に「女子向け」と訴求しつつ、「ビジネス・ターゲット」として密かに熟年女性・アクティブユーザーを狙っていると考えられるのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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