寄付文化は日本に根づくか?

2011.03.11

営業・マーケティング

寄付文化は日本に根づくか?

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

うかつにも今日まで知らなかったのですが、昨年(2010年)末に、日本初となる『寄付白書 2010 - GIVING JAPAN2010』(日本ファンドレイジング協会)が発行されていたんですね。

ネットでちょっと調べてみました。

同白書では、日本の寄付とボランティアの全体像を把握するために、大規模な全国調査を実施した結果がまとめられているようです。それで、日本全体の年間寄付額についてみると、総額で1兆円強でした。内訳としては、

・個人寄付:5500億円
・法人寄付:4900億円

となっています。さらに、上記の明確な寄付行為以外に、個人が「会費」として年間3700億円余りを払っています。(私自身も数年前から、アジアの途上国を支援する某NPOの会員になり、わずかな会費を出していますが。)こうした会費も、実質的な寄付行為とみなすことができるでしょうから、日本人は知られざるところで結構寄付を行なっているということですね。

たまたまメディアで取り上げられて、注目を集めることになった「伊達直人を名乗る人たち」ばかりほめていてはだめなんです。(笑)

まあ、日本人もそれなりに寄付をしていたとはいえ、個人寄付については、米国のわずか40分の1の規模だそうです。(米国の個人寄付には一部資産家の莫大な寄付が含まれているでしょうけど)人口比を考えても、日本人の寄付額は圧倒的に少ないですね。もちろん、だからと言って米国と同じ水準を目指すべき、という競争的な発想はしたくないですけど。

さて、「平等意識」が比較的強い日本の文化の視点からみると、日本人は相対的に「寄付行為」が苦手だと思います。お互いに助け合うということはOKでも、あからさまな「寄付」は、心理的な上下関係を生み出してしまうからです。古くからそれほど明確な社会階級が存在しなかった日本では、「一方的な慈恵行為」は、するほうも、されるほうもあまり好きではない。

一方、欧米の階級意識はかなり根強いものがあります。「ノブレス・オブリージュ」(貴族などの、地位や財力、権力の高い者は、社会に対して相応の責任を果たすべきという考え方)という言葉があるように、自分よりも下位のものに恵むことは当然という文化が根底にあるようです。

また、寄付をすることは、彼・彼女の自尊心を高めることでもあるのです。以前、某日本人が書いたエッセイに書かれていたのですが、外国人の知り合いが、街中でお金を乞うているホームレスの人に気軽に小銭を渡しているのを見て

「どうしてそうしたことをするの?」

と聴いたら、

「だって、気分がいいじゃないか!」

と応えたというのです。この回答には、「見下している」とまでは言いませんがちょっとした「優越意識」が感じられますよね。私たち日本人には、なかなか理解しにくい感覚ではないでしょうか。

日本人の寄付が欧米に比べて圧倒的に少ないのは、このあたりに起因するところがありそうです。ただ、逆に言えば、伊達直人現象に見られたように、寄付者が誰かがわからなければ抵抗がないわけですから、インターネットなどを通じて、気軽に、ひそかに寄付ができる環境が整いつつある今後は、日本人の寄付行為もさらに増加していくことにはなるかと思います。

*日本ファンドレイジング協会 Webサイト
http://jfra.jp/

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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