「勘と経験」から「データ」へ?変わる自販機販売戦略

2011.02.22

営業・マーケティング

「勘と経験」から「データ」へ?変わる自販機販売戦略

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 桃の節句も近づき、日差しや吹く風の中にも少しだけ春を感じる今日この頃。JR東日本管内の駅では超レアな「果汁飲料」が販売されているのをご存じだろうか。「桃の花」は春の季語であるが、「桃果汁」だ。そして、その商品の裏側には、販売データとバイヤーの勘と経験がせめぎ合った物語が隠されていた・・・そんな話を社長に聞いてきた!!

 企画部の回答によると、外見の変化はターゲット変更というよりは、ターゲット像をより明確化したというべき結果であることがわかった。即ち、「メインターゲット=20代~30代働く女性層、サブターゲット=20代~30代の働く男性層」だという。そして、そのメインとサブの設定こそ、販売データと同社バイヤーの勘と経験のせめぎ合いの結果を表すものであったのだ。

■販売データから見たターゲット像

 同社には他の飲料メーカーや自販機運営会社にはない武器がある。飲料の販売データを精緻に取得できることだ。
 同社は「次世代自販機」と呼ばれる自動販売機を現在約40台稼働させている。商品画像を表示し、画像にタッチして商品を選択する47インチの大型液晶ディスプレイ。その上部に利用者の属性(年代・性別)を判別するセンサが搭載されている。利用商品×属性をPOS情報として取得できるのだ。また、suicaの個人情報に関わらない性別などの属性データも、カードリーダー・ライターを搭載した3,000台の自販機から収集している。
(参考記事: 次世代自販機は液晶テレビの夢を見るか?

 「いままでの自販機では取得できず、販売社もメーカーもわからなかった販売時点(POS=Point Of Sales)のデータを活用して、商品作りや売り方を通してお客様の便益を高めたいのです」。
 同社の代表取締役社長・田村 修氏が取材に応じてくれた。そのための次世代自販機や地産のオリジナル商品だというのだ。

 今回も昨年から活用できるようになった、suicaや次世代自販機のデータを活用した商品リニューアルを計画したという。

 データから見えてきたのは意外な消費者の購買像だった。
 果汁飲料は「朝」に購入されると思われていたが、実際には販売データからは、「14時以降の構成比が高い」ということがわかった。つまり、「おやつなどの小腹満たしや、リフレッシュ時に飲まれる」と想定することができたという。また、「女性」の購入が多いと思われていたが、実際には「男性」の購入が多かった。
 街ナカの自販機利用者は男女、9:1であるといわれている。しかし、同社の統計によれば、エキナカの自販機は男女6:4。比率が均衡しているため果汁飲料は女性が買っているであろうという想定だったのだ。

■「あえて、女性!」というバイヤーの狙い

 「結局は、女性をメインに狙うことにしたんですよ」。田村社長は笑いながら話してくれた。そこには同社の製品戦略を考えるバイヤーの狙いがあるのだという。
 バイヤーにはトータルで見た販売データではなく、そのブレイクダウンと、それ以外の定性的な事実が気になっていたという。トータルで見れば男性購入者が上回る果汁飲料の販売数だが、初期段階ではまず、女性が購入している。インターネットを見てみれば、新発売した同社の果汁飲料に関してブログやSNS、掲示板などにいち早く書き込みをしているのも女性だ。
 「まず、女性が新規購入をして間口を広げ、その後、男性が購入してリピートを重ねるという動きが想定されたのです」と田村社長はいう。同社バイヤーもそこに注目して、女性を意識したネーミングやパッケージにこだわったのだという。
 E.M.ロジャースの「イノベーション普及論」では、まず、新しいものに飛びつく「イノベーター」が動き、その後イノベーションの価値を評価して導入する「アーリーアダプター」が動く。その「価値を評価できる人=目利き」の態度を見て、一般的の人々「アーリーマジョリティー」が動く。エキナカ自販機では、イノベーターとアーリーアダプターが女性であり、男性がアーリーマジョリティーであるということなのだろう。だとすれば、バイヤーの狙い通り、女性が購入し、男性が認知しなければ販売は「初速」を得ず、ヒットせずに「失速」することになるのだ。
 マーケティングにおける「ターゲット設定」においても、Realistic Scale(規模)、Rate of Growth(成長性)などと並んで、Rank(優先順位)とRipple Effect(波及効果)の評価が欠かせないのである。

次のページ■ロジックと勘の整合が今後の課題

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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