香りのマーケティング

2011.01.27

営業・マーケティング

香りのマーケティング

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

ライオンによれば、柔軟剤の市場における「香り付き商品」のシェアは、前年09年の75%から、201年は78%と3%アップ。

衣類からほのかに匂う香りを好む人がますます増加しているようです。(日経新聞2011/01/26)また、「ほのか」どころか、「強烈」な匂いを振りまく、米国ブランド「ダウニー」の日本での人気も急上昇中ですね。

ある意味、現代の生活の無臭化が進んだおかげで、逆に自分の好みの香りに包まれていたいという欲求が強くなったのでしょうか。

この香りに敏感な現代人を対象に、独特の香りを設計し、ブランディングの一環として展開する企業が増えています。ブランド独自の香りのことは、

「ブランドセント(Brand Scent)」

と言います。まだ本当に新しい概念であり、ブランディングの教科書にもほとんど記載がありません。(私の本には収録しましたけど!)

香りは、ダイレクトに脳を刺激します。実際、匂いを感じる感覚器官は、他の感覚器官と異なり、脳に直結しているのです。そして、理屈を超えたさまざまな感情を香りを通じて喚起することができるのです。

ですから、いわゆる

「エモーショナル・マーケティング」
 (感情マーケティング)

においても中心的な役割を果たすことができます。

さて、香りがエモーショナルマーケティングにおいて極めて有効であることを示す実験結果があります。私たちの5感が、感情面にどの程度訴える力があるかを調べると次のようになったのです。

ここで、「感情面」とは、快・不快、興奮・鎮静、喜怒哀楽といった、比較的短期しか持続しない感情のことであり、心理学では「情動(emotion)」と呼ばれるものです。

-------------------
感覚 | 感情面に
   |与える割合
-------------------
嗅覚 | 8割
味覚 | 6割
聴覚 | 4割
触覚 | 4割
視覚 | 2割
-------------------
(出所:『嗅脳』鳥居鎮夫著、イートハーヴフロンティア)

なんと、「嗅覚」は、感情を揺り動かす影響力が8割もあるのです。一方、マーケティング・コミュニケーションで主流を占めてきた「視覚」は意外にも2割しか、感情に訴える力がありません。

現在、PCディスプレイ画面で展開される映像などとリンクした匂いを自動的に流す仕組みなども研究されていますが、香りを活用したマーケティングはこれから、ますます注目されていくことになりそうです。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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